「ごちそうしていただき」を「ご相伴に与り」と言い換える

「ごちそうしていただきありがとうございます」という表現は、よく使ってしまうと思います。

 上司や仕事先の人など、目上の人にはもう少しあらたまった言い方をしたほうが、さらに好感をもたれます。

 そんな場面では、

「昨夜はご相伴(しょうばん)に与(あずか)り、誠にありがとうございます」

 という表現を使ってみましょう。

「ご相伴に与る」というのは茶道からきている言葉です。

 茶席では主賓のことを「正客(しょうきゃく)」、正客の連れの人を「相伴」といいます。正客の次にお茶をいただくときは「お相伴いたします」という挨拶をするのが茶席のマナーです。

 このことから年長者と食事をすることを「お相伴に与る」というようになりました。

 言葉の背景を知って使うと、借り物の言葉ではなく、しっかりと自分の身についた言葉となります。

 そんな語彙をどんどん増やしていっていただきたいと思います。

 

感謝の言葉のバリエーション

 ご馳走になったときにかぎらず、お礼や感謝を伝えるシーンは多いと思います。そんなときこそ語彙力が試されます。

「ありがとうございます」

「感謝します」

 ではありきたりです。

「感謝」の「謝」という字はもともと「辞去する」「別れを告げて去る」という意味をもつ漢字です。「感謝」は「感激して言葉を述べる」をいう意味があります。つまり、相手からしてもらったことに感激して、その気持ちを相手に伝えるのが「感謝」です。

 感謝の気持ちを表す言葉はたくさんあります。

 たとえば「ご厚情に感謝します」という表現があります。「厚」という字は土が分厚く重なっている状態、「情」という字は美しい心を表します。地層が積み重なるような、厚い親切を受けたときにその厚意への心からのお礼の気持ちを伝えたいときに使います。

 また、ひとつのことで深い親切を受けた際には「深謝いたします」、いろいろら方面にわたってお世話になった際には「多謝いたします」という表現があります。シーンに合わせて最適な表現をしてみましょう。

「ありがとうございます」もよく使ってしまいますが、「畏れ入ります」と言い換えると、謙虚で慎ましやかな印象になります。「畏れ入る」は、ありがたさに身をすくむ、という意味をもつ言葉です。