神奈川大がトップ通過

 結果として〝サプライズ〟となったのは神奈川大のトップ通過と、大東大の5年ぶり通過だろう。

 神奈川大は昨年の全国高校駅伝4区区間賞のルーキー宮本陽叶が1組で2着(29分45秒50)に食い込むと、3組までに出走した6人全員が9着以内でフィニッシュ。最終組も踏ん張り、総合トップを守った。

 エントリー選手上位8人の10000m合計タイムは16番目だったが、「故障者もほとんどなく、予定通りの布陣をそろえられたことが今回の結果につながったと思います。トップ通過はおまけですね」と大後栄治監督。男子マラソンで日本記録を持つ鈴木健吾(富士通)が4年時(2017年)に全日本優勝を果たした神奈川大に再び、勢いが出てきたようだ。

 大東大は今季から同校OBで昨季まで仙台育英高の男子監督を務めていた真名子圭監督が就任。2019年の全国高校駅伝を制した指揮官の戦術がハマった。2組でトップを独走したワンジルは仙台育英高時代の教え子で、実業団のコモディイイダを経て、大東大に入学した選手だ。昨年の全日本選考会は4組で38着、箱根駅伝予選会はチーム最下位に沈むなど苦しんでいたが、今季は5000mで自己ベストを6年ぶりに更新。ワンジルの〝復活〟と日本人選手の成長がチームの躍進につながっている。

 トップ通過を狙っていた東洋大と創価大は2位と3位通過。ともに目標順位に届かなかったものの、トップ神奈川大とのタイム差は東洋大が18秒50差、創価大は34秒10差だった。

 東洋大は14年ぶりの参戦となり、「本戦とは全然違いますね。いい緊張感と嫌な緊張感がありました」と酒井俊幸監督は苦笑い。関東インカレの1部長距離種目(1500m以上)で33点を奪ったが、今回の選考会にはうまくピークを合わせることができなかった。

 関東インカレで入賞した主将・前田義弘(4年)と佐藤真優(3年)を連戦の疲労を考慮して外すと、木本大地(4年)、及川瑠音(4年)、児玉悠輔(4年)もシャープな走りを見せることができなかった。

 そのなかで1年時の関東インカレ5000m以来となる〝レギュラー〟をつかんだ熊崎貴哉(3年)が活躍。「調子が良かったので自分が選ばれた驚きはなかったですけど、やらなければいけないなという自覚はありました」と日本人トップ(2着)の快走を見せた。

 最終4組は松山和希(3年)と緒方澪那斗(1年)。「自分が頑張るから安心して走ればいい」と緒方に声をかけた松山が有言実行の走りを披露した。「タイム的には満足いかなかったですけど、結果としては日本人トップを取ることができたので最低限いい走りができたかなと思います」と松山。エースが存在感を発揮すると、ルーキー緒方も20着(29分18秒39)でゴールして、大役をしっかりと務めた。

 創価大は葛西潤(4年)が出場できれば島津雄大(4年)を温存する予定だったが、エース格の葛西が故障の影響で欠場。最終組は〝5年生〟となる嶋津が12着(29分06秒39)でまとめて、チームを初の伊勢路に導いた。「29分00秒~20秒を目標に走ったので、想定通りですね。自分がもう1年残った意味が、ひとつあったと思うので、三大駅伝でも期待に応えられるようにしたいです」と嶋津は笑顔で汗を拭った。

 榎木和貴監督は、「葛西、嶋津のどちらかがいなくてもトップ通過を目標にやってきましたので、もうちょっとかな。手応えもあったんですけど、課題も残ったと思います」と冷静だった。それでも葛西以外に濱野将基、新家裕太郎ら主力の4年生を外して、ルーキー2人(石丸惇那、野沢悠真)が活躍するなど、新戦力も登場している。選手層が厚くなり、総合力もかなり高くなった印象だ。

 全日本大学駅伝は前回大会で8位以内に入った駒大、青学大、順大、國學院大、東京国際大、早大、明大、中大にはシード権が与えられている。今回の結果とチーム状況を考えると、東洋大、創価大、東海大の3校は学生駅伝でも上位を狙える戦力があるだろう。神奈川大も面白い存在だ。そして大東大は4年ぶりの箱根駅伝出場に向けて大きなステップになった。