進化を支えたアイスダンスの楽しさ

 2人のその足取りを支えたのは何だったか。全日本選手権後の髙橋の言葉が浮かんでくる。

「エッジワークといったところが、深くてですね……。ステップの深さや傾斜、『こんなにも滑るんだ』とか、『こんなにもディープにカーブできるんだ』とか。けっこうできている方だと思っていた部分で、『お子ちゃまだったな』、というくらい、スケーティングの1つのステップ、1つのターンだけでもアイスダンスってこんな世界なんだな、というのを技術的な面ですごく感じています。すごく面白い。2人で滑って何も考えずに動けて一体感があったときや気持ちのよさは、なかなかシングルで体感できないところです」

2022年3月25日、世界選手権でRDを演じる村元・髙橋 写真=Raniero Corbelletti/アフロ

 アイスダンスに本格的に取り組んでみて、発見したことがたくさんあった。そのどれもが楽しかった。言葉にあった熱が、それを伝えていた。

 ただ、今まで知らなかった世界に触れてそこに楽しさを発見できるかどうかは、その人次第だ。好奇心や未知への関心があるかないかに左右される。髙橋にはそれがあったから、アイスダンスに触れて楽しめたし、楽しめたから進化があった。これまで髙橋は、数々の挑戦とともに道を切り拓いてきた。その原動力もまた、そうした姿勢あってこそではなかったかとも感じることになった。そして髙橋の姿勢は、村元にも好影響を及ぼしただろう。

 世界選手権を終えた2人は、それぞれ、こう語っている。

「世界と戦えるポテンシャルを持っているチームだな、っていうのが、率直な気持ちです」(村元)

「先シーズン(2020-2021シーズン)は、自分が『アイスダンサーだ』っていう実感はほとんどなかったですけど、やっとアイスダンサーになれたのかな、と思います」(髙橋)

 さらに髙橋は、こうも語っている。

「アイスダンスのカップルとして認められた1年になったのかな、と思います」

 現段階では、来シーズンのことははっきりしていない。話し合って、結論を出していくことになる。

 ただ、シーズンを終えて感じさせたのは、2人の成し遂げた成果の凄みと、ここからのポテンシャル、そして髙橋の果てない挑戦する心の根底にある「楽しむ」姿勢だ。

 それらを思うとき、きっとまだ滑り続ける——そんな思いもまた、湧いてくる。