「人間を一種の反応装置と捉え、入力に対してどんな出力が返ってくるかを理解する」。マーケティングをこのように考えると、マーケティング(部門)や営業のみならず、人事など広範な領域で活用できる――。西友など4社のCMOを歴任し、現在は株式会社Preferred Networks(プリファードネットワークス)執行役員 最高マーケティング責任者を務める富永朋信氏が、本質を捉えた経営視座のマーケティングについて解説する。
※本コンテンツは、2021年12月6日に開催されたJBpress主催「第3回 Marketing&Sales Innovation Forum」の特別講演Ⅲ「経営視座のマーケティング~B2CからB2B、B2Eへ~」の内容を採録したものです。
マーケティングの本質は人間を理解し、態度・行動変容の仕組みを理解すること
マーケティングというと、4P(Product、Price、Place、Promotion)やSTP(Segmentation、Targeting、Positioning)などのフレームワークで語られることが多い。一般的に、企業の中でマーケティングと呼ばれる職種・業務には、調査・分析、商品開発、プライシング、ブランドマネジメント、広告宣伝などがある。
しかし、富永氏は、マーケティングは下の図のように経済学、社会学、心理学、哲学といった学問分野の表面をなぞり取ったものだと考える。
「マーケティングを勉強すると、非常に広範な知識を得て賢くなったような感覚を得ます。しかし、そこで立ち止まらず、関心を学問分野にまで深掘りしていくとより本質的な仕事ができるようになると私は考えています」
富永氏はマーケティングを「人はなぜ心を動かすか? 人はなぜ買ってくれるのか? それらを理解し、仕組み化・再現化すること」と定義する。つまり、核となるのは人間理解だ。
「人間を一種の反応装置のように捉え、どういう働き掛けや刺激(入力)により、どういう言動や感覚の変容(出力)があるのかを理解します。マーケティングの中心にあるのは、それを再現可能な形で仕組み化していくということ。そのために、心理学や行動経済学、社会学などを学ぶことが有要です」