米商務省は22年1月、「米国の製造業など半導体の需要家が持つ重要半導体の在庫が5日分を切る水準にまで落ち込んでいる」とする報告書を公表した。需要家の在庫日数(中央値)は19年時点で40日だった。これが21年9月には5日未満に減った。「海外の半導体工場が2~3週間閉鎖された場合、米国製造施設の在庫が3~5日分しか確保できていなければ、操業停止や従業員の一時帰休を余儀なくされる恐れがある」と指摘。米政府は、供給ショックや物流停滞を懸念し、危機感を募らせている。

 ジーナ・レモンド米商務長官は「米国のサプライチェーンは依然として脆弱だ」と述べ、「できるだけ早く半導体産業に補助金を投じるための法を成立させることが重要だ」と訴えた。

米欧で半導体産業強化狙う法案

 米連邦議会下院は22年2月4日、「米国競争法案」を可決した。法案の柱は国内半導体産業強化のための520億ドル(約6兆円)の補助金。中国に対抗して半導体の国産化を促進し、競争力向上を目指す狙いがある。ただ、法案成立までにはいくつかの手続きがある。

 上院では21年6月に類似の「米国イノベーション・競争法案」が可決している。今後、上下院が両法案の相違点を調整する。一本化した法案をあらためて上下院で可決し、大統領の署名を経て成立となる。

 一方で、欧州連合(EU)の欧州委員会は22年2月8日、半導体生産の拡大を狙う「欧州半導体法案」を加盟国と欧州議会に提案した。官民合わせて430億ユーロ(5兆6600億円)以上を投じ、域内の生産・開発強化を目指す。30年までに、世界シェアを現在の約10%から20%へと倍増させるとしている。

 フォンデアライエン委員長は、声明で「欧州の競争力を大きく変えるものになる」と強調。「短期的には、サプライチェーンの混乱を予測して回避できるようになり、将来の危機に対する我々の耐性を高められる」と説明した。

 なお、SIAによると、半導体売上高が最も多いのは中国。同国の21年の売上高は前年比27.1%増の1925億ドル(約22兆2700億円)だった。米州は前年比27.4%増となり、伸び率が最も高かった。欧州の伸び率も27.3%と高い水準。日本は19.8%と比較的緩やかな伸びにとどまった。

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