研究者だけに「いくら儲かるの?」と問い詰めるのは酷

 研究がもたらす社会価値・顧客価値を研究者自らが語ることは、近年はほぼ普通に求められるようになっていると思う。その中で時々、価値を語るだけでなく、その将来の収益貢献額まで算出しろと研究者に迫っているケースを見掛けることがある。「どういう商品になるのかは分かった。で・・・」と切り出され、「それでいくら儲かるの?」や「その市場規模はどのくらいなの?」「シェアはどのくらいとれそうなの?」といった質問が研究者に投げられるという構図である。

 確かに市場規模や収益を知りたいというトップの気持ちは分かるが、それらの数字まで求めるのは少し酷だと私は思う。市場での売上額などはさまざまなパラメーターが絡む世界である。それらを面倒と思う研究者もいるだろうし、勢いで適当な数字を言うことに抵抗がある研究者も少なくない。

 技術の世界だけに閉じていては駄目で、なんらかの活用イメージが湧くような話をする必要があることに異論はない。そこまでは、民間企業に所属する研究者はぜひやるべきだと思う。しかし、その価値が将来、どのくらいの大きさの市場を生み出し、その中でどのくらいの売り上げを自社が得ることができ、そしてどのくらい利益を生むのかまで、そのテーマの発案者たる研究者に「数字を言え!」と迫るのは少々行き過ぎのように思えてならない。

 価値の可能性を商品イメージ(活用イメージや市場のイメージ)の形で語りさえすれば、あとは発案した研究者だけでなく周りの人(マーケッター)などが協力して市場規模などを想定するという連携プレーをとるべきである。いやむしろ、連携プレーにしたほうが市場の見方も多面的になって、いい効果をもたらす。商品イメージさえ湧けば、市場規模の推定を直感的にできるセンスのいい人もいるはずである。

 新しいことをテーマに掲げる研究者は、市場規模を想定する力を養うだけでなく、そういうセンスのいい人など周りの人の協力を得られるようにしておくことが大事だと思う。

コンサルタント 塚松一也 (つかまつ かずや)

R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント
全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント

イノベーションの支援、ナレッジマネジメント、プロジェクトマネジメントなどの改善を支援。変えることに本気なクライアントのセコンドとしてじっくりと変革を促すコンサルティングスタイル。
ていねいな説明、わかりやすい資料をこころがけている。
幅広い業界での支援実績多数。