文=三村 大介 

ザハ・ハディドの新国立競技場案 提供=Zaha Hadid Architects/EyePress/Newscom/アフロ

トラブル続きだった東京五輪

 早いもので2021年ももうすぐ終わろうとしている。結局、昨年同様コロナウィルスに翻弄される1年にとなってしまったが、そんな中、今年最も話題に上がったトピックの1つは、東京オリンピック・パラリンピック関連であったのではないだろうか。

 この開催にあたっては、感染者数を抑えきれていないということもあり、否定的な意見もかなり多くあったはずなのだが、いざ開催となると、なんだかんだ言って、選手達の活躍に大いに沸いたことは、みなさんの記憶にも新しいことだと思う。

 にしても、過去これほど、スッタモンダ、混乱を招いたオリンピックはなかったのではないだろうか。呆れるほど次から次へと問題が発生する状況は、もはやブラックコメディーのようですらあった。

 このドタバタ劇には日替わりと言っていいほど、「濃いキャラ」が多数登場し、そして消えていった。失言や問題発覚で辞任する人たち、不適切表現で炎上する人たち、そしてその状況にあたふたする人たち・・・その中でも主役クラスの重要キャラであったのが、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長であったことは間違いない。

 彼については、オリンピック・パラリンピックを開催するべきか否か、国内が迷走する最中、こんな報道がされたことは、今回の大喜劇の中の重要な一幕と言っていい。

 2021年5月、米ワシントン・ポスト紙(電子版)は、「日本政府は五輪中止を決断し、負担の損切りをすべきだと」とコラムで主張した。加えて、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長を「地方行脚で小麦を食べ尽くす王族のように開催国を食い物にする悪い癖がある」と批判し、[Baron Von Ripper-off(ぼったくり男爵)]と表現した。いやはや、なんとも辛辣な肩書き、役名である。

 ちなみにこの[ぼったくり男爵]、前回の『東京建築物語』でも話題にした『2021新語・流行語大賞』にしっかりノミネートされ、見事トップテン入りを果たしている。

2021年8月8日、東京五輪閉会式でのトーマス・バッハ 写真=新華社/アフロ