文=三村 大介

《DAIKANYAMA T-SITE》 写真提供=カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社

「ヒジャブ・コスプレ」のルーツ

 マンガ、アニメ、ゲームなどの登場人物に扮し「キャラクターになりきること」・・・。そう、日本を代表するポップカルチャー、サブカルチャーの1つである「コスプレ」のことである。

 国内ではなんと1980年代頃から行われていたようだが、インターネットの普及に伴い、日本発のアニメやゲームなどのコンテンツが海外で取り上げられ、人気になっていくことで、コスプレも一気に世界的に認知度を高めていくことになった。

 現在では「コスプレ」は欧米諸国を始め、韓国や中国、台湾などのアジア諸国でも熱心なファンが多く、「costume play」を語源とする和製英語の「コスプレ」は、その英語表記である「cosplay」が辞書に載っているほどである。今や「コスプレ」は「OTAKU」や「Kawaii」同様、世界中で通用する日本語となっている。

2014年、フィンランドで開かれたコスプレ大会 マティアス・トゥキアイネン(フィンランド、エスポー出身), CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

 そんな「コスプレ」の楽しみ方も人によって、国によって、そして文化によって多種多様のようだが、近年、マレーシア、インドネシア、シンガポールを中心とした地域で「ヒジャブ・コスプレ」が流行っているそうだ。

 はて、「ヒジャブ」って何?最近、海外ニュースでも聞いたような・・・。

 ムスリムの女性たちがスカーフのような布で頭や身体を覆っていることはよく知られているが、それはイスラム教には、「女性は自分の美しい部分を隠すべし」として、女性は人前で顔と手以外肌を見せてはいけないという戒律があるためである。そう、その纏っている布が「ヒジャブ」。

ヒジャブを被る女性 写真=新華社/アフロ

 実は東南アジアのイスラム圏でも、アニメやマンガは以前から大人気だったそうだ。しかし「ムスリム女子」が「コスプレ」に踏み出すことはなかった。彼女たちを躊躇わせていたのが、まさにこの戒律。髪を見せなければいいのであれば、カツラは被ればいいのでは?と思いきや、この戒律ではカツラもNGというから、なかなかハードルは高い。

「コスプレをしてみたいけど、どうしたらいいかしら?」・・・そんなジレンマに光明を見出したのがインドネシアに住む裁縫師の女性。「そうか、別にヒジャブを外さなくても、ヒジャブそのものをキャラの髪型にすればいいんじゃん!」と思いついて始めたのが「ヒジャブ・コスプレ」のルーツとなった。

2017年、マレーシアで開催されたコスプレイベント 写真=ロイター/アフロ

 ヒジャブでコスプレなんてできるの?なんて疑うことなかれ。これがなかなかクオリティが高い。コスプレやマンガと言ったカルチャーにはあまり精通していない私が見ても素直に「Kawaii」と思ったりする。

 もともとアニメやマンガのキャラクターは、なんともまあ奇抜な色や髪形が多いので、カツラを布で作ってしまってもなんの違和感もない。個人的にはむしろこっちの方がオリジナルの「2次元」に近いのでもっと良いのでは?とさえ思ってしまう。

 それにも増して、戒律という制約を逆手に取ったこのアイディア、創意工夫に私は感心しかり。これこそ「クリエイティビティ=創造力」と言うに相応しいのではなかろうかと。