普段から信頼の貯金をしておくことで、ここ一番での反則が正当化できる

 「まずやってしまって、後で謝る」作戦において、後で謝ったときに許してもらえるためには、普段から信頼の貯金をしておくことが実際的なポイントになる。

 「まあ、ルール違反だけど、○○さんだったら、許さざるを得ないよな」「○○さんが、そこまで言うなら、仕方がない」と思ってもらえるか否かは、そのときの謝り方の巧拙でなく、本質的にはそれまでの行いで信頼を勝ち得ているかどうかで決まるものである。肝心な場面で「許可をもらわずにやってしまって、後で謝って許してもらう」という作戦をとるには、普段から信頼を得ておくこと、(俗っぽくいえば)いろいろと周りに貸しをつくっておくことに尽きる。

 ここまで述べてきたような実践的な知恵を、OJTを通じて先輩は若い人に教えていくべきだと思う。ここ一番で奥の手を使うために、普段の仕事振りが重要なのだということを、折に触れて説いていくことが、イノベーションに関わる部門の先輩の大切な役割なのである。

 R&Dの現場において、技術的な知見のOJTも重要だが、まさにこのようなイノベーション推進の知恵をOJTしていくことも重要である。

コンサルタント 塚松一也 (つかまつ かずや)

R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント
全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント

イノベーションの支援、ナレッジマネジメント、プロジェクトマネジメントなどの改善を支援。変えることに本気なクライアントのセコンドとしてじっくりと変革を促すコンサルティングスタイル。
ていねいな説明、わかりやすい資料をこころがけている。
幅広い業界での支援実績多数。