社内発イノベーションで生じる提案者と審議者の摩擦
そもそもイノベーションというものはめったに起きないことだが、R&Dの掛け声として「イノベーションを起こせ!」といつも言われている。年間計画あるいは中期計画に「イノベーション」という単語が含まれているのではないだろうか。
R&D部門の一人一人からなにかイノベーションのタネのアイデア出しを求め、社内審査に通れば少し予算をつけて、研究開発の次のステージに進めるというような取り組みをしているところも多々ある。「イノベーションはセンスのよい人間こそが良質なアイデアを思いつくもので、広く呼び掛けることに実質的な意味はない。みんなのモチベーションのためにやっているのだ」という捉え方もあり、その取り組みの良し悪しは意見が分かれるところだが、ここでは詳しくは触れない。
今回問題にしたいことは、何かしらイノベーティブなアイデア(少なくとも思いついた本人はそう思っている)を企画書にしたため、しかるべき"えらい人"の前でプレゼンテーションをする際に起こりがちな摩擦や、すれ違いについてである。
イノベーションあるいはイノベーティブというのは、要するに従来の発想になかった真新しいアイデア・考え方である。画期的な商品、奇想天外な事業、従来を否定するプロセス・・・。イノベーションはその特性からして、最初から多くの人に理解されるものではない。多くの人から「分かった!それいいね」という賛同が最初から得られるというアイデアはさほどイノベーティブでない可能性が大である。一概にいえないが、本当にイノベーティブなアイデアは、従来を生きてきた人からすれば、「なんてバカなことを言っているんだ」あるいは「言っている意味が分からない」という反応になるものだ。
そのアイデアが本当にイノベーティブなのか(世の中に役立つ新しいものなのか)は神様には分かるだろうが、多くの普通の人には最初は分からないものである。
最初は理解が得づらいものを社内提案し、先に進めるという非常に困難な道を歩むのが、社内発のイノベーションである。提案する側には、信念、志、情熱、熱意、根性、ガッツ、粘り強さ、人脈、社内政治力・・・などが求められる。ちょっとやそっと否定されたり非難されたりしてもあきらめることなく、しぶとくあの手この手で賛同者を増やしていくプロセスである。このイノベーションを引っ張るリーダシップについては、また別の機会に書くことにしたい。