オリンピックでは、ソチから団体戦が採用された。男女シングル、ペア、アイスダンスの選手たちにより行われるものだ。2人は、日本がオリンピックの団体戦で競うためにも、欠かせない存在だったし、それも含め、日本のアイスダンスの柱であった。

 引退したあとのキャシーにインタビューした際、こう語っていた。

「アイスダンスをもっと日本に広めたいという気持ちで頑張ってきました。今も変わりありません」

 指導者となり、また、振り付けでも活躍している今日も、アイスダンスへの思いは消えていない。

 昨年末に引退を発表したクリスもまた、姉のキャシー同様、「日本にもっとアイスダンスを」という思いを秘めていた。

 

2020年3月、クリス・リード急逝

 その夢に一歩近づいていた。今年1月にオープンした新しいスケートリンク「木下グループ・関空アイスアリーナ」で、キャシーとともに木下アカデミーアイスダンススクールを開設したのだ。

 本格的に育成に力を注ごうとしていた。だから拠点としていたアメリカ・デトロイトから日本に移る予定だった。

 その矢先のことだった。

 日本時間で3月15日、クリスは急逝した。心臓突然死と発表された。30歳だった。

 長年にわたりアイスダンスのために踏ん張ってきたことを誰もが知っていた。穏やかで優しい人柄も愛されていた。日本はもちろんのこと、海外のスケート関係者たちから追悼が寄せられた。

 クリスの夢は道半ばに終わった。ただ、その志は消えることはない。キャシーの思いも消えることはない。

 彼らは歴史を、たしかに前へ進めた。キャシーはさらに進み続けるだろう。そして彼らの思いを継ぐ人々もきっと出てくる。

 次回は日本のアイスダンスを変える可能性を秘めた選手を紹介する