遠目で見ていた企業のホンネ
「で、どれくらい効果あるの?」
そうした中、WeWorkに興味を示す企業経営者や新規事業担当者が知りたいのは、「実際にどんな効果が出ているのか?」。その一言に尽きるだろう。メンバーの中に起こり始めている化学反応をいくつか見ていきたい。
例えば株式会社クオカードと株式会社サムライパートナーズによる協業は、直近で注目すべきメンバー同士のコラボ事例と言える。クオカードは「QUOカード」を発行する事業会社だが、デジタル時代に合わせてスマホ決済を可能にする「QUOカードPay」を開発するためのデジタル人材獲得、事業推進体制の拡充と本格運用に向けてR&D機能を持った「デジタルイノベーションラボ」を、東京駅にほど近い「WeWork丸の内北口」(東京・丸の内)に設置。その後、一定の人材を獲得し、規模拡大のために「WeWork東京スクエアガーデン」(東京・京橋)に移した。
一方のサムライパートナーズは、主に食品業界の営業や財務の支援を行うコンサルティング会社で、「WeWork丸の内北口」のメンバーだ。一見繋がりがないように見える両社だが、1000円分のQUOカードPayを景品にした、即席めん「ぺヤング」で有名なまるか食品株式会社のプロモーション施策を共創した。まるか食品は、サムライパートナーズの顧客企業の一つで、販売ではローソンもプロジェクトに加わった。
同じWeWorkのメンバーとは言え、現在の両社の拠点は異なる。そんな中で両社の接点となったのは、クオカードが催したQUOカードPayローンチパーティーだ。そこにサムライパートナーズが参加、パントリー(WeWorkに設置されているキッチン。コーヒーやビールなどを提供しているスペース)でビールを飲みながら話が盛り上がり、「何かやりましょう!」となったという。いかにもWeWorkらしいエピソードだが、構想からPR戦略、パッケージやカードのデザインなどプロモーション実施まで5カ月というスピード感もまた、スタートアップのカルチャーがあふれるWeWork流といえる。
全く異なる事例もある。このところWeWorkには、地方自治体が入居するケースが相次ぎ、ちょっとした話題となっている。これはWeWorkをグローバルに見渡しても他にはない動きだという。火付け役となったのは静岡市で、現在では神奈川県や、熊本市、北海道・上士幌町・帯広市、福岡県・嘉麻市などもメンバーになっている。先ごろ、パイオニアの静岡市に、さっそく成果があった。
静岡市の主な狙いは、市の㏚と地元企業支援だ。2018年10月から3カ月間のトライアルで入居した同市だが、その“タイムリミット”中に計4回のイベントをWeWorkで実施、約150社のメンバー企業と接触したという。その中からつかみとったのが、家電量販店を展開する株式会社コジマ(ビックカメラグループ)との、地方創生の推進に向けた連携協定だ。この協定は、静岡の名産品をコジマの店舗で販売するなどの協業をイメージしたもの。通常の行政の慣行ではありえないスピードで話が進んだ。この展開に、関係者は「WeWork効果」を実感しているという。ビックカメラも「何かやるためにジョインした」WeWorkメンバーだ。共通するマインドがイノベーションを倍速でドライブさせている。