中国政府が17年6月に施行したインターネット安全法(サイバーセキュリティー法)にも従い、西部・貴州省にデータセンターを建設した。同法は国内で収集した顧客データを国内保存するよう義務付けており、アップルはこれに迅速に応じた。加えて、中国政府の検閲要請にも応じ、アプリストア「App Store」の中国版から数千本のアプリを削除した。アップルは中国消費者の好みにも耳を傾け製品設計に生かしているという。

米政府による輸出規制で競合消える

 米政府による輸出規制もアップルにとって有利に働いた。中国のスマホメーカー、華為技術(ファーウェイ)は19年に世界出荷台数でアップルを追い抜き、韓国サムスン電子に次ぐ2位となった。

 ファーウェイは19年8月に高速通信規格「5G」対応スマホで先行し、20年6月までに中国で5Gスマホを月間700万台以上販売した。一方、アップルが最初の5G対応スマホ「iPhone 12」を市場投入したのは20年10月。このころまでに当時のトランプ米政権がファーウェイを安全保障上の脅威とし、同社に輸出規制を科した。ファーウェイは半導体など重要部品の供給制約を受けてスマホの生産が減少。「HONOR(オナー)」ブランドで展開していた低価格スマホ事業の売却も余儀なくされた。

 ファーウェイの中国におけるスマホシェアは20年半ばに29%あったが、2年後にはわずか7%に低下。これに対し、アップルのシェアは9%から17%に上昇した。 高価格スマホ市場におけるアップルのシェアは過去3年で51%から72%に上昇した。

サプライチェーン混乱に脆弱

 ただ、香港のカウンターポイント・リサーチによると、現在、iPhoneはその95%の生産を中国に依存している。

 アップルは11月6日に声明を出し、最新モデルの「iPhone 14 Pro」と「同Pro Max」の出荷台数が「当初の予想を下回る見込みだ」と明らかにした。

 iPhoneの製造を請け負う、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の中国・鄭州工場で稼働が大幅に低下している。新型コロナウイルスを封じ込める中国政府の「ゼロコロナ政策」による行動制限がその理由だ。アップルのビジネスは、中国サプライチェーン(供給網)の混乱に対して脆弱だとフィナンシャル・タイムズは指摘している。