提供:JAXA
高市内閣が選定した「17の重点戦略分野」にも明記され、安全保障における利用のみならず成長産業としても注目を浴びる日本の宇宙開発。その中で、技術基盤の整備や民間企業との連携など中核的な役割を果たしているのが宇宙航空研究開発機構(JAXA)だ。JAXAが取り組む宇宙開発プロジェクトは、どのような能力や考え方を備えた人材によって進められているのか。そこからビジネスリーダーはどのようなヒントを得られるのか――。2025年10月に書籍『導く力 プロジェクトマネジメントで大切なことは宇宙が教えてくれた』(JTBパブリッシング)を出版した、JAXA第一宇宙技術部門事業推進部計画マネージャの有川善久氏に話を聞いた。
求められるのは複数の専門分野を持つ「π型人材」
──著書『導く力』では、プロジェクトマネジメントの現場で求められるビジネススキルについて解説しています。大局的な判断が求められる状況下では、複数の専門分野を持つ「π(パイ)型の人材」が求められるとのことですが、どのようなスキルが求められるのでしょうか。
有川善久氏(以下敬称略) π型人材の重要性は、私がJAXAに入社した2002年当時から繰り返し語られてきました。2つ以上の専門分野に通じることで、複雑なプロジェクト全体を見通す力が養われるためです。
私自身、大学では制御工学を専攻していました。これは、コンピューターを用いて物理的なものを制御する分野です。人工衛星の姿勢制御には、この「頭脳」となる制御技術だけでなく、ガスを噴射して推進力を得る推進装置を用いた「手足」の力も必要になります。そのため、プロジェクトに関わる中で推進系の知識も習得しました。
それ以外にも電気系、太陽電池やバッテリーを含む電源系、そして衛星にとって非常に重要な通信系など、多くの技術分野にまたがる知識が求められます。特に通信が途絶えると衛星は操作不能になるため、通信の知識はプロジェクトマネージャにとって必須です。
人工衛星のプロジェクトマネージャになる頃には、これらの分野を一通り把握している必要があります。もちろん、入社直後にすべてを理解できるわけではありませんが、将来的に大局的な判断を担う立場に立つならば、専門外の領域にも積極的に学びを広げ、少なくとも2つ、できれば3つの分野に精通することが望ましいと考えています。分野横断的な視点を持つことは、今後ますます重要になるでしょう。







