いよいよ刷新されたリーフ

 日産リーフが3代目に生まれ変わった。

 8年前に行われた2代目へのフルモデルチェンジではエクステリアデザインが全面的に見直されて大きく刷新されたことを印象づけたが、このときはプラットフォームを初代から流用していた。それに対して今回はプラットフォームも刷新。パワートレインなどにも見逃せない改良が施されている。

3代目リーフの骨格

 まずプラットフォームは「ひとクラス上」の日産アリアと同じCNF-EVプラットフォームを採用。おかげでリアサスペンションが半独立式のトーションビームから完全独立式のマルチリンク式へと大幅に格上げされた。

先代のトーションビームに対してマルチリンク式になったリアサスペンション

 しかも車体の捻り剛性が86%、ステアリング剛性は48%向上したことで、走りの質感の大幅な改善が期待される。

3-in-1と呼ばれる新型ドライブユニット

 パワートレイン系ではモーター、インバーター、減速機を一体化することで容積の10%削減を可能するとともに、ユニットから突き出した部分を小さくすることで振動を低減。さらにモーターに6分割のスキューローター(モーター内のローターを斜めに配置すること)を採用してより滑らかな回転を実現した。実は旧型リーフのモーターはローターが2分割で、これを6分割にしたことも滑らかな回転に役立つ模様。エンジニアのひとりは「エンジンでいえば4気筒(2分割)か12気筒(6分割)かの違いのようなもの」と説明していたが、そのくらいの効果があるようだ。

3-in-1の構造

 また、フリクションロスの低減やボディーの空気抵抗削減などを通じて効率を改善。78kWh(B7の場合)の大容量バッテリーと組み合わせることで702km(WLTCモード)と余裕ある航続距離を実現した。

試乗は19インチタイヤのB7Gから

 試乗したのは日産追浜工場に隣接したグランドドライブという一種のテストコース。ここでごく短時間ながら、B7X(18インチ・タイヤ)とB7G(19インチ・タイヤ)の2グレードに試乗した。

シートやサウンド関係以外でXとGの違いとして大きいのはタイヤのサイズ。上位のB7Gは19インチタイヤ(235/45R19)を装着する

 先にB7Gで走り始めると、車内がとても静かなことがまず印象に残った。ボディーの高剛性化やパワートレインの一体化などが功を奏したのだろう。また、EVで長い経験を持つ日産らしく、どのドライビングモードを使っても車速のコントロールが容易で、1ペダル・ドライブを使ってもギクシャクすることはなかった。

インテリアではB7Gはパドルシフトを装備している

 1ペダル・ドライブは加速だけでなく減速もスロットルペダルを使ってコントロールするため、荒い操作をするとボディーがガクガクと前後に揺れてしまうことが少なくないのだが、日産は急激な操作に対する反応を適度に遅らせることで、こうしたガクガクとした動きを防いでいるようだ。それでも、活発に走らせたいと思ったときには的確に反応する俊敏性も備えている。この辺の「さじ加減」こそ、日産のアドバンテージといっていいだろう。

 もうひとつ印象に残ったのが、サスペンションがソフトで乗り心地が快適なことだった。

 この点は事前のプレゼンテーションでも強調されていた。とりわけ、日本固有といっても差し支えのない「高架道路でのジョイント部」で発生するショックを低減するため、アメリカ仕様やヨーロッパ仕様よりもソフトなサスペンション・スプリングやアンチロールバー(コーナリング時などにボディーが傾くのを抑えるバネの一種)を採用したとの説明があった。

 その効果は一目瞭然で、多くの日産車とは別物のしなやかな乗り心地で、路面からのショックを効果的に遮断していた。

こちらはB7X。価格はB7Gの5,999,400円に対して5,188,700円と80万円ほどの差がある

タイヤサイズ1インチの差

 私はいま「多くの日産車とは別物」という表現を使ったが、これ自体は決して悪い意味ではない。私の知る限り、日産車はある程度、車速の高い状況での走行安定性を重視して硬めのサスペンション・スプリングなどを用いることが多い。したがって走行安定性は高いが乗り心地はいくぶん硬めというケースが少なくない。つまり、いい悪いではなくトレードオフの問題なのだ。

 いっぽうのリーフは、いまも説明したとおりどちらかといえばソフト傾向に振っている。ただし、ステアリングを右へ左へと素早く切り替えしても、車体が不安定な状態にはなりにくかった。正直にいえば、不安定になる兆候みたいなものは見えたが、それをいいバランスで抑えているように感じられたのである。

 続いて18インチ・タイヤのB7Xに乗り換えると、19インチ・タイヤ装着のB7Gよりもさらにタイヤの当たりがソフトになったが、前述した「左右に切り返すシーン」では、やはり反応が遅れて少しもどかしく感じられた。つまり、乗り心地と操安性のバランスでいえば、19インチ・タイヤ装着のB7Gのほうが好ましかったとなる。

B7Xのタイヤは215/55R18

 この点を開発担当者に確認したところ、18インチ仕様と19インチ仕様でそれぞれベストなサスペンション・セッティングを割り出したところ、ほとんど製造誤差に入る程度の違いしかなかったので、タイヤ・サイズに関わらずサスペンションの仕様を一本化したとのこと。その際に、高グレードのB7Gを優先したとの説明があった。したがって、もしも予算に余裕があり、乗り心地とハンドリングに高いバランスを期待する向きにはB7Gをお勧めしておきたい。

 それともうひとつ、EVのなかには、ボディーが傾いたときに急速に元の姿勢に戻そうとしてこれが不快に感じられる現象がときたま見られるが、新型リーフではこれを感じなかった。こうしたEV特有の動きは、重心が極端に低いEVでは重心と乗員の頭との距離が通常のエンジン車よりも大きくなり、これによって一種のテコのような作用が起きて乗員の頭が強く揺さぶられることに原因があるという。日産はこの現象をよく把握していて、乗員が不快に感じにくいサスペンション・チューニングを実施することでその防止に努めているそうだ。この辺も、EV経験の長い日産らしい配慮といえる。

 なお、現時点でラインナップされているのは価格が500万円台のB7XとB7Gのみだが、年明けにはバッテリー容量が30%ほど小さくて価格も300万円台となることが期待されるB5がデビューする見通しなので、こちらも楽しみだ。