走行能力も文句なし

 クルマとしての基本性能も大きく進化していた。

 初期型のモデル3は足回りが突っ張っているような印象があり、ゴツゴツ感や突き上げ感が少なからずあったけれど、新型はしなやかな足回りを得て快適な乗り心地を実現していた。ハンドリングも、過敏なところが消えて扱い易さが増した。

 動力性能や航続距離にも不満はない。それどころか、試乗車のモデル3パフォーマンスだったら0-100km/h加速は3.1秒と、文字どおりスーパースポーツカー並みのダッシュ力を誇る。しかも、電気自動車は極低速時から大トルクを発揮するので、内燃エンジンで同じ0-100km/h加速:3.1秒を実現したスポーツカー以上に迫力ある走りを体験できる。ちなみに、最高速が261km/hに達するというのも、基本的に高速性能が苦手な電気自動車としては驚異的。国土交通省審査値の航続距離が610kmというのも文句のないデータだ。

 さらにいえば、テスラは独自の充電システム「スーパーチャージャー」を備えているのも強みのひとつ。その多くは最低でも120kWの充電出力を備えているので、30分もあればほぼカラの状態から満充電の80%程度まで余裕で充電できる。ちなみに、スーパーチャージャーの最新規格は充電出力が最高250kWなので、充電時間は120kWのおよそ半分。ここまでくれば、内燃エンジン車に近い感覚でエネルギー・チャージができるだろう。

 私の基本的なスタンスは「試乗した際の印象」をリポートすることにあるので、同じスタンスを守れば、新感覚を満載した新型モデル3は何の不満もない電気自動車という結論になる。

 本来であれば、私の原稿はここで終わるべきだが、テスラには、その新しさゆえにアレルギーを抱く人が少なくないことも事実だ。たとえばショールームが極端に少なく、メンテナンスの予約にも時間を要するという話を耳にしたことがある。事故を起こしたときの安全性、電気自動車では致命的というべき発火のリスクを懸念する声もある。

 ただし、これらはあくまでも伝聞に過ぎない。そしてテスラを信奉する人々にとって、そういった意見は杞憂に過ぎないようだ。それよりも様々な意味で新しい体験ができることのほうが大切だからこそ、テスラを選ぶのだろう。

 どちらが正解なのか、実際にテスラを所有したことのない私にはわからない。だから結論は保留とさせていただく。なんとも玉虫色のインプレッションとなったことを深くお詫び申し上げたい。