外界認識能力の正確性に驚く

 そうした操作系の進化にも増して驚きだったのが、新しいモデル3がいかに周囲の状況を正確に、そして詳細に捉えているか、という点にあった。

 自分と同じ車線や隣にどんな車両が走っているのかをメーターパネル内に映し出す機能を、テスラは早くから備えていた。最近では日本車メーカーでも同様の機能を提供しているケースがあるが、テスラの場合は単に車両があるかどうかだけではなく、それが乗用車かトラックかも正確に捉えて表示してきた。

 そうした機能がさらに進化し、今度は路面上に描かれた車線にくわえ、たとえば駐車場の区画を示す白線とか、周囲を歩く人やセーフティコーン(パイロン)までが、リアルな形状で表示されるようになった。その正確さや緻密さには驚かされるばかりだ。

 その背景にあるのが、カメラによる画像認識で完全自動運転を目指そうとするテスラの技術戦略だ。

 一時のテスラはレベル2、つまりドライバーが周囲を監視して運転に責任を持つ運転支援システムであるにも関わらず、あたかも人間が運転に関与する必要のないレベル3(部分自動運転)であるかのような表示を行っていたこともあったが、現在は「フルセルフドライビング・ケイパビリティ(監視付き)」、つまり完全自動運転の機能は備えているけれど、あくまでもドライバーの監視が必要なシステムであることを明示している。誠実な表現といっていいだろう。

 しかも、テスラで特徴的なのは、周囲の状況を確認するセンサーはカメラだけで、運転支援システムを装備する多くのクルマに備えられているミリ波レーダーを省略した点にある。それどころか、最新作ではバンパーなどに埋め込まれていた超音波センサーまで排除。純粋にカメラだけで周囲の様子を捉えているのだ。

 それだけ彼らは画像処理や画像認識に自信があるのだろう。

 もっとも、「自動運転にどれだけのセンサーが必要か?」という命題に対しては「カメラとミリ波レーダーは欠かせない」という意見から「いや、レーザー光線で周囲をスキャンするLiDER(ライダー)も必須」という声まで、様々な考え方が存在する。この辺も現時点ではどれが正解かを判断できないけれど、コストという観点でいえば、カメラだけに依存するテスラ方式がもっとも有利なようにも思える。