年末年始は華やかな演目も多く、歌舞伎ビギナーも見どころの多い時季。だがしかし、慌ただしい年末となると、コスパ、タイパも心をよぎる……。数十年後、観ておいてよかったと思えるために、歌舞伎通が使っている裏技とは? これだけはチェックしておきたい見どころとは?

文=新田由紀子 

2025年の新春浅草歌舞伎で上演される「絵本太閤記」では、市川染五郎が武智光秀(浮世絵の中心に描かれた武者)を初演する。豊原国周 筆「絵本太閤記」 画像=東京都立図書館デジタルアーカイブ

歌舞伎座12月は「幕見」という裏技で

 「歌舞伎を観るのは時間がかかるのがネック。休憩を挟んで約3時間~3時間半くらいかかるので、忙しい時には一幕見(ひとまくみ)が便利ですね」と語るのは、歌舞伎を観続けて40年近くになる岸本美子さん。数年前に起業して12月は特に忙しいという彼女のように、“一幕見”は通が利用するやり方のようだ。

「江戸時代の歌舞伎は、朝早いうちから行って、夜まで観る一日がかりだったといいます。『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』『義経千本桜』といった名作も、“通し(とおし)”といって全幕を上演すると、とても現代の上演時間ではおさまりません」

 そこで、今では、“通し”なら2か月に渡って上演することも。“見取り(みどり)”といって、人気のある面白い幕だけをピックアップして上演することも多い。

 そして、長い時間は取れないという観客にとって便利なのが、歌舞伎座の最上階(4階)などで行われている一幕見というシステムだ。

 歌舞伎座の一幕見のチケット購入方法は、次の2通り。

①観劇前日の昼12:00からオンラインで購入できる4階指定席(約70席)。クレジットカード決済で、一人4枚まで購入可能。

②当日売り出される4階自由席(約20席)。当日劇場1階の一幕見席窓口にて現金のみで、一人1枚購入可能。人気の演目の場合は早めに窓口に行ったほうがいい。

「一幕見席」の詳細

https://www.shochiku.co.jp/play/theater/kabukiza/makumi/

「時間に余裕があれば、半日かけて歌舞伎を観るのもいいのですが。夜の部3つの演目のうち、これとこれは観なくてもいいけど、こっちだけは観ておきたいというようなこともあります。そういう時に便利なのが、観たい演目だけ観られる幕見。

 かつての歌舞伎座の幕見席は、急な階段をぜーぜー言ってのぼったものですが、2013年に建て替えられてからはエレベーターもありますし」