ベストトリオはこれだ!
私のベストトリオは、「夢と幻想」トリオ。中央に三岸好太郎《雲の上を飛ぶ蝶》(東京)を据え、左にマルク・シャガール《夢》(パリ)、右にサルバドール・ダリ《幽霊と幻影》(大阪)を配している。三岸好太郎《雲の上を飛ぶ蝶》はこれまで何度も鑑賞したことがある大好きな作品だが、今回ほど美しく見えたことはない。雲の上で群れる色とりどりの蝶。実際にはあり得ない光景だが、それだけに幻のようなはかなさと、霊魂が天に上っていくかのような神々しさを感じさせてくれる。
その神々しさは、シャガールとダリの2作品によってぐっと高められている。ぐったりと仰向けになった女性を背中に乗せた紫色のウサギが印象的なシャガール《夢》。巨大で不気味な雲の下で背中を向けてポツンと座る女性がうら寂しいダリ《幽霊と幻影》。ウサギと女性は冥界の使いのようにも見える。これら3作品が並んだ展示室の一画には、気高く厳かで、少し不気味な空気が満ちている。トリオ編成の相乗効果によるものだろう。
ワーストトリオも選んでみた
では、ワーストトリオは何かというと…。あえて選ぶとすれば、「ポップとキッチュ」トリオにしたいと思う。森村泰昌《肖像(カミーユ・ルラン)》(大阪)、奈良美智《In the Box》(東京)、ヘンリー・ダーガー《a)1 グランデリニアンに捕らえられる 2 森林火災に追われるヴィヴィアン・ガールズ 3 天国に感謝できる》(パリ)。
3者とも、唯一無二のスタイルで独創的な世界観を構築したスーパースター。そもそもトリオ編成に収まるアーティストではないだろう。この3者の作品を並べても、それぞれの独自性が際立つだけでしっくりとは馴染まない。それゆえ、改めて森村泰昌、奈良美智、ヘンリー・ダーガーの凄さを感じたわけだから、この3点を組み合わせた学芸員の術中にまんまとはまったといえるかもしれない。
美術史上初の試みであるトリオによる展覧会。素直に「こういうのもおもしろい」と感じた。2回目が開催されれば、見に行きたいと思う。