文=酒井政人 写真提供=アシックス、アディダス ジャパン、ナイキジャパン

日本代表公式ウェアはパリの日の出をイメージ

 今夏に開催されるパリオリンピック・パラリンピック競技大会。世界中から注目されるスポーツの祭典はスポーツブランドにとって〝絶好のプロモーション〟になる。4月には大手メーカーが続々と今夏のビッグイベントに向けた新アイテムを発表している。

 アシックスは日本代表の公式スポーツウェアを発表した。キーカラーには、「チームジャパンレッド」に加えて「サンライズレッド」を採用。表彰式などで着用するポディウムジャケットには、パリの日の出をイメージして空が赤く染まる力強さと暖かさを2色のグラデーションで表現した。

アシックス パリ2024 TEAM JAPAN ウェア

 アイテムの開発には「コンディショニング」「サステナビリティ」「ダイバーシティ」の3つのテーマが設けられたという。朝晩の寒暖差が大きいパリの夏でも選手たちが高いパフォーマンスを発揮できるように、熱がこもりやすい脇下などは動きに追従して孔が開閉するメッシュ素材を配して、保湿性と通気性を確保した。

 ポディウムジャケットとポディウムパンツの温室効果ガス排出量は前回大会と比較して約34%削減。Tシャツやポロシャツは一枚の生地から複数の型取りを行うことで端材を極力出さないサステナブルな生産を実現した。また年齢や性別にフィットするようにシルエットを見直し、Tシャツには様々なスタイリングが楽しめるビッグシルエットを採用している。

 公式ウェアはジャケットやパンツ、シューズのほか、ソックスやバックパック、フーディーなど全12型をラインナップ。これらのアイテムは現在、日本オリンピックミュージアムで展示されている。パリの表彰式が〝ジャパニーズレッド〟に染まることを期待したい。

 

アディダスは短距離用スパイクに注目

 アディダスはパリオリンピック・パラリンピック競技大会に向けたパフォーマンスフットウェアコレクション『adidas 2024 ATHLETE PACK』をグローバルイベント『ADIDAS PRESENTS: THE ROAD TO PARIS』で発表した。

 今回のコレクションは、陸上競技、テニス、バスケットボールといったおなじみの競技から、ブレイキンやスケートボードといった次世代スポーツまで、それぞれの競技に特化して開発された高機能性シューズ49型をラインナップしている。

 シューズは黒と白を基調としたモノトーンだが、デザインテーマは「炎の揺らめき」。アッパーやソールに炎をイメージしたオレンジやピンクを配色して、頂点を目指すアスリートに共通する情熱を表現した。これらのデザインはアスリートの動きに合わせて足元に炎が燃え立つような視覚効果を生み出すという。

 なかでも注目のアイテムは短距離用のスパイクだろう。エナジーリターンと優れた剛性を備えた『ADIZERO PRIME SP STRUNG 3』が本コレクションで登場した。データに基づき、一つひとつの繊維を配置したアッパーが足をシームレスに包み込むことで、軽量な快適性と優れたサポート力を実現したという。

アディダス ADIZERO PRIME SP STRUNG 3

 昨年のブダペスト世界陸上ではアディダスのスパイクを着用したノア・ライルズ(米国)が男子100m、200m、4×100mリレーで金メダルを獲得。パリでも新モデルを履いたライルズが爆走するだろう。

 今回のコレクションには入っていないが、マラソンや箱根駅伝では超軽量の厚底シューズである『ADIZERO ADIOS PRO EVO 1』が〝新時代〟を作っている。パリ五輪のマラソンでも〝主役〟の座を奪うのか。

 

ナイキの長距離用スパイクがさらに進化

 ナイキはパリオリンピック・パラリンピック競技大会に向けた新製品発表イベント『Nike On Air』をパリで開催。2024年の各国の代表ユニフォームが発表された。

 代表ユニフォームは多くのアスリートの情報とデータに基づいて各競技のためデザインされているだけでなく、それぞれの国と各スポーツが象徴するアイデンティティと多様なコミュニティからインスピレーションを得ているという。

 様々な種目がある陸上競技においては、アスリートが求める選択肢を満たすため、アイテムは約50近くある。各種目のために細かく調整された12種類のスタイルを用意しており、個々の体型や好みに合ったウェアを選ぶことができる。

 それから陸上競技のスパイクもさらに進化した。100mから400mを走るスプリンター向けの『マックスフライ 2』、800mから1500mの中距離向けの『ヴィクトリー 2』、5000mと10000mを走るための『ドラゴンフライ 2』と『ドラゴンフライ 2 エリート』。4つの新モデルが登場した。

 マックスフライ 2はピンの数を7本から6本に減らしてソールの内側を広くしたことで、安定性と操作性が向上。コーナーでの安定性も高まったという。ヴィクトリー 2も全面的に改良され、試作品の段階で5つの世界記録を打ち立てている。両モデルは前足部にエアを搭載しており、ビジュアル面でも画期的だ。

ナイキ ドラゴンフライ 2

 それから5000mと10000mで男女の世界記録をもたらした『ドラゴンフライ』が熱い。ドラゴンフライ 2は前作からピンを2本取り除き、合計4本にしたことでフラットフォームを拡大。安定性が高まっただけでなく、新しい糸を使用したことで軽量化にも成功した。

ナイキ ドラゴンフライ 2 

 面白いのはドラゴンフライ 2 エリートという進化版が登場したことだろう。ドラゴンフライ(Pebaxをブレンドしたプレート)と異なり、カーボンファイバー製のプレートを搭載。より反発力が強くなったことで、さらなるタイム短縮が可能になりそうだ。

 4年に一度のスポーツの祭典。各メーカーの最新ギアがアスリートたちのポテンシャルを引き出して、地球上に熱狂をもたらすだろう。