名品は時間を掛け積み重ねられた伝統の力が生み出すもの。そして物作りの情熱は、やがて過去の名品さえも進化させていく。ロングセラーとヘリテージをつむぎながら誕生したニューデザイン。その二つを知ることで、ブランドの持つ本質と革新性が見えてくる。

写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川 剛(TRS) 編集/名知正登

イタリアを代表する高級ドレスウエア作りの旗手

 1964年、北イタリアはパドヴァに創業したベルヴェスト。当初から卓越した職人技にて仕立てるスーツやジャケット等のドレスアイテムを得意とし、その技術の高さから、著名メゾンブランドの既製服製造を多彩に請け負ってきた実力派だ。数あるイタリアンファクトリーのなかでも腕の良さは折り紙付きであり、着心地の要である繊細な衿付けや強弱をつけたハンドワークはトップクラスと評されている。

 理想のドレスアイテム作りに欠かせない職人の育成に関しても、他社に先駆け独自の取り組みを行っているベルヴェスト。職人のマイスター制度のように若手技術者に対して段階的に教育を施し、数年でイタリアの伝統的な仕立て技を広く習得可能なプログラムを導入しているという。

 また、新規開発に関しても非常に積極的。それまでコレクションになかったレザージャケットも、革製品工場に依頼せず、テーラードの技術でもって自社にて作り上げる行程を開発。優れたジャケットのごとく軽く立体的なレザージャケットを打ち出している。伝統的でありながら柔軟かつ未来志向。イタリアンテーラードの明日を担う、極めて優良なブランドなのである。