ハードよりソフトの充実
向かったのがオーストラリアのゴールドコーストであった。英語の勉強を主眼としていたが、ビーチリゾートである街で発見があった。
「自分は山育ちなのでオーストラリアの海に憧れがあったんですね。正反対のコンテンツに魅力を感じるわけです。だとするとオーストラリアの人たちは白馬に興味を持つだろう、ハードを整備するより英語であったり受け入れる環境を整えることで来てくれるという思いが湧きました」
帰国後には金融の世界で名を馳せるゴールドマン・サックスの専属ジムトレーナーを務めた。そこで英語力に磨きをかけるとともに、旅先での過ごし方を目の当たりにし、何が大切なのかを再確認できた。
「白馬がもともと持っているコンテンツで十分この人たちは満足してくれるなと思いました」
ハードに投資するのではなく、海外から訪れる人々が心地よく滞在できるように、伝統をいかしつつ支配人として実践したソフトの充実が、数々の受賞に象徴される高い評価を得たのである。そしてその評価は海外に限定されず国内の旅行者からも得ることになった。
ただし、丸山は家業ばかりを意識していたわけではなかった。さまざまな場にいた経験を振り返る言葉の端々にあったのは、白馬への思いだった。実際、国内でも有数の人気を誇る大会となった「白馬国際トレイルラン」をはじめ、白馬の活性化につながる活動にも打ち込んできた丸山は、やがて、村長選への出馬を決意する。(続く)
丸山俊郎(まるやまととしろう)白馬村長。1974年、長野県白馬村生まれ。日本大学商学部経営学科卒。株式会社オリエンタルランドなどに勤務し家業の「しろうま荘」支配人に。2012年に「ワールド・ラグジュアリー・ホテルアワード スキーリゾート」世界一を受賞したのをはじめ数々の国際的な賞を受賞。一方で白馬高校非常勤特別講師担当、「白馬国際トレイルラン」創設に携わるなど多角的に活動。2022年、白馬村長に就任。