ヨーロッパの人たちにとってのカフェは、文化や歴史に根付きくらしの一部。人生を豊かにしてくれるカフェ文化をこよなく愛し、カフェ巡りをライフワークとしているエッセイストの柏原 文さんが、一度は行きたいヨーロッパのカフェを、珈琲と人生にまつわる物語と美しい写真ともにご紹介。ぜひ珈琲のお供にぜひお楽しみください(全5回)。

取材・文=Aya Kashiwabara 写真協力=飯貝拓海  編集協力=春燈社

*本稿は『ヨーロッパのカフェがある暮らしと小さな幸せ』(リベラル社)の一部を抜粋・再編集したものです。

世界の芸術家を虜にした空間

 この「画家たちのビストロ」は100年前から町のカフェ兼食堂として地元の人々に愛されてきた。数あるパリの著名なカフェと比べたら目立たない存在である。しかし、多くの場所が観光スポットになってしまった中で、今も地元民と共に生きている貴重な場所だ。

 アールヌーヴォー様式の華やかな内装は、シャンデリア、大きな鏡、大理石のテーブルとパリの伝統的なカフェの要素を全て持ち、様々な風貌の人々がやってきては、自分の居場所にしている。

芸術作品のような美しいカフェで自分らしく振舞える時間

 フランス初のカフェはマルセイユにできたが、今に続く《パリ風カフェ》の原型となったのは1686年パリで創業の「プロコープ」。それまでのイスラム風を脱し、昔の豪華浴場をぶち抜き、大理石と大きな鏡はそのままにシャンデリアで飾りベルサイユ風にした。それは美に目がないパリのマダム達に大好評で、その後数々の伝説のカフェが生まれていった。

アールヌーヴォー様式の曲線が美しい鏡はインテリアのアクセント

 洗練されたパリのカフェのスタイルは、ヘミングウェイ、ピカソ、シャガールなど、後に世界に名をはせる芸術家をも魅了し彼らの居場所となる。映画『ミッドナイト・イン・パリ』は、現代の脚本家が1920年代の狂騒のパリのカフェに紛れ込み……というコメディーで、当時のカフェの雰囲気を気軽に楽しめる。