有形文化財のホテルに泊まる
戸倉上山田温泉でおすすめの宿が明治36年創業の老舗旅館「笹屋ホテル」。なかでも登録有形文化財に泊まることができるのが別棟8室の「豊年虫」です。
昭和7年(1932)、近代建築の巨匠フランク・ロイド・ ライトに師事した日本人建築家・遠藤新が敷地の一角に別荘として設計した数寄屋造りの個室8室で、笹屋ホテルが創業100年を迎えた2003年、文化庁より登録有形文化財の指定を受けました。これを機に別荘の名を改め、専用厨房を備えた8室だけの宿、「笹屋ホテル・豊年虫」として開業しました。
豊年虫とは千曲川から羽化する「かげろう」のことで、地元ではこの虫を数多く見た年は豊作になると伝えられています。昭和2年、文豪志賀直哉が笹屋ホテルに逗留中に短編小説「豊年蟲」を執筆していることがその名の由来です。
遠藤新は和と洋の融合という共通を試みながら、床の間をはじめとした各部屋の細部に至るまで、それぞれに異なる意匠を与えました。書の楷書、行書、草書のように、「真」にあたる客室「蘭」を基本に、ほかの7部屋を「行」「草」と変化を付け、館全体に遊び心が感じられる設計です。
部屋の空間をさらに生かしているのが池を配した庭です。自生する樹木の間に池のある庭園と和風建築がよく調和しています。作庭は遠藤新と同郷で、ともに東京帝国大学に学んだ、幼少時代からの親友である阿部貞著によるものです。
お祭りで盛り上がった後は大浴場や貸切風呂で体をいたわり、繊細な美を宿したお部屋で、のんびりと豊かな時間を過ごしてはいかがでしょう。
また、翌日、時間があれは善光寺まで足を延ばし、国宝の本堂にお参りしましょう。善光寺のご本尊、一光三尊阿弥陀如来は秘仏です。お祀りしてある本堂の瑠璃壇の下の暗闇の回廊を巡り、ご本尊の真下にかかる身代わりの「極楽のお錠前」に触れてみてください。御本尊とご縁を結ぶといわれるこの「お戒壇巡り」で、極楽のお錠前に触れることができた人は、必ず極楽往生できると信仰されています。
最後は仲見世の美味しいお蕎麦でしめ、長野の夏を満喫してください。