驚異的な量の原稿をどうやって書いたか

 清張は机に平べったい製図台のような傾いたものを置いて、タバコを吸いながら膨大な量の原稿を執筆しました。

 最高潮に筆が走った時代には、月に6、7本連載を抱えていたそうですが、あまり苦にしていなかったようです。

 テレビ番組のインタビューで、近代を書いて飽きたら現代、現代に飽きたら古代、古代に飽きたら近代、というように書いているとそのうち1日が終わる、と言っています。

 これだけの執筆量をこなすには、1日24時間のうち⾷事は1分20秒、排泄は十数秒などという計算もあるくらい驚異的な執筆量で、書きすぎで腕が痙攣してしまう書痙という病気にもかかっています。

 そんな生活でも、「ちょっと寝る」と言って15分くらい寝ると、頭が全部切り替わったそうです。

 まったくの下戸で、アルコールはまったく飲めなかったと言われています。

 銀座のバーに行っても、それは取材のためです。酔っ払うためでも、女性を口説くためでもありません。

 バーのホステスたちは、質問ばかりする清張に閉口していたそうです。

 また、書くためにはどんなに忙しくても人への取材や資料に当たることを厭いませんでした。

 現在、生まれ故郷の北九州市小倉にある松本清張記念館には約2万3000冊もの蔵書が収められています。「とことん調べて書く」というのがそのスタイルなのでした。