絶筆は新興宗教がテーマ
最後の小説となった未完の『神々の乱心』(1997年刊)では、新興宗教の問題を取り上げています。書かれた時期は、オウム真理教が衆院選の選挙活動などをしていた時期でした。小説は創価学会など、複数の宗教団体を参考に書いたとされています。
清張は池田大作と仲良しでした。共産党の宮本顕治委員長とも交友があり、1975年に創価学会と日本共産党の間で結ばれた「創共協定」も清張が仲介役となって成立しました。
共産党も西側諸国とは違った「闇」の世界があるに違いないと、清張は思ったのでしょう。ちょうど冷戦時代で大衆が興味を持っていた時期だったので、そこにもスポットを当てて、暴いてやろうとしたのではないでしょうか。
清張はこのようにして時代に合わせて作品の転機を自らつくり、その類稀な才能を発揮した作家でした。闇にスポットを当てて描くことで、生涯、ベストセラーを生み続けたのでした。