文=酒井政人
2時間5分台でワン・ツーフィニッシュ
4年ぶりに一般参加の定員がコロナ禍前の水準に戻り、約3万8000人ものランナーが駆け抜けた東京マラソン2023。数々のドラマがあったなか、今季の学生駅伝で3冠を達成した駒大の先輩たちが大活躍した。
男子はハーフを1時間2分08秒、30㎞を1時間28分39秒で通過。終盤、日本人トップ争いは、山下一貴(三菱重工)、大迫傑(Nike)、其田健也(JR東日本)の3人に絞られる。このなかで25歳の山下と29歳の其田が駒大OBだった。
3回目のマラソンとなる山下は32㎞付近から集団を引っ張るなど積極的なレースを展開。38㎞過ぎて大迫に前を譲るも、ほどなくして抜き返す。ふたりを引き離した山下が日本歴代3位となる2時間5分51秒(7位)でフィニッシュ。残り1㎞で大迫を逆転した其田も同4位の2時間5分59秒(8位)でゴールに飛び込んだ。
「一番近い目標が藤田さんの記録かなと思ってやってきたので、そこを超えられたのはすごくうれしいです」と山下が言えば、其田も「自己ベストが7分台なので、まずは6分台を出そうと思っていたんですけど、前を追った結果が5分台というタイムにつながったのかなと思います」と好タイムに充実の表情を見せた。
駒大OBのマラソン最高記録は藤田敦史(現・駒大ヘッドコーチ)が2000年の福岡国際で打ち立てた2時間6分51秒(当時・日本記録)だった。
教え子たちの日本人ワン・ツーと2時間5分台に駒大・大八木弘明監督は笑顔をのぞかせた。
「ふたりとも藤田の記録を破ってくれて良かった。もう20年以上の前ですし、靴も進化している。そろそろなのかなと思っていたんです。大阪で大塚がもう少しだったので、ふたりは東京で破ろうと思ってきたんじゃないでしょうか」
2月26日の大阪マラソンは大塚祥平(九電工)が2時間6分57秒の自己ベストをマークするも藤田の記録に6秒届かない。今回の東京では昨年2月の大阪で2位(2時間7分42秒)に食い込んだ山下と、昨年の東京で日本人2位(2時間7分23)に入った其田に〝藤田超え〟が託されていたのだ。
其田はスタート前、大八木監督に〝プレッシャー〟をかけられていたという。「大八木さんにも期待されていたので、後輩たちが駅伝3冠を取った流れでうまく走れたんじゃないでしょうか」と話していた。