前回、「モノ消費からコト消費へと一般的にも論じられる中、耐久消費財のようにNPS(Net Promoter Score:顧客ロイヤルティを測る指標の一つ)が徐々に低下していくのを避けるためには、付帯的なサービス体験(≒コト消費)を追加で提供していく必要があること」。つまり、「モノのNPSから、コトのNPSへの転換を図り、重要顧客とつながる続けること」の重要性について、紹介しました。今回は、この点について、事例を交えて詳しく解説していきます。
企業に蓄積される、顧客が登録する自身の属性や嗜好性、商品・サービスにまつわるオンオフ購買・行動の履歴など。企業はこれらのデータを「顧客への高度な価値提供につなげ、ひいては事業成長に貢献する有効資産」にしていくことが求められます。
そのためには、テクノロジーを駆使して「顧客が見える」のみならず、とりわけ重要な顧客を特定し、理解を深め、「顧客にも、事業にも、役に立つ」状態を創り出すことが重要です。
データからは、途切れることのない顧客の多様な行動のありよう、その時々の気持ちを垣間見ることができます。ゆえに企業は、購買や行動を左右するであろう重要な局面を先回りして発見し、有形・無形のサービスで寄り添っていく必要があるわけです。
「NPSは下がり続ける!?」 とある事例と要因仮説
耐久消費財などを含む複数の分析事例に基づいたグラフを紹介します(図表1)。縦軸は顧客ロイヤルティ評価の一つとして用いられる「知人への推奨意向」であるNPSの高さを、横軸は購買してからの経過時間の遷移を示しています。
グラフによると、最もNPSの水準が高いのは購買当初で、その後、徐々に時間を経るに従い、低下していきます。
その要因の仮説としては、購買当初は欲しいものを手に入れた喜びや、モノの魅力にもひかれ、満足度が高いのは想像に難くなく、やがて時間が経過するに従い、市場に常に新商品が発売されることによる自身が保有するモノへの見劣り感などが増し、友人・知人への推奨の気持ちが萎えていくことが考えられます。ことに、ハイテク商材や常にデザインが進化していくカテゴリーにおいてはその傾向が顕著ではないかと推察されます。
このようにNPSが低下し続けることは、決して望ましいことではなく、顧客ロイヤルティとも関係の深いNPSは、むしろ図表の点線のように、徐々に高めていく必要があります。少なくとも顧客自身の「買い替え時」には、極力高い水準を保っていたいものです。