中国で最も利益を上げているテクノロジー企業は、騰訊控股(テンセント)やアリババ集団といった同国インターネットの巨人ではなく、米カリフォルニア州に本拠を置くアップルだと、英フィナンシャル・タイムズが11月8日に報じた。
その香港、台湾を含む中華圏における2022年9月末までの年間営業利益は312億米ドル(約4兆5500億円)で、2年前の2倍以上(104%増)になった。これに対し、テンセントの過去1年間の中国における営業利益は152億ドル(約2兆2200億円)。アリババは135億ドル(約1兆9700億円)で、アップル中国事業の営業利益はこの2社の合計を上回っている。
アップルの中国戦略
アップルが中国で成功している要因は、ティム・クックCEO(最高経営責任者)主導による企業外交や、米政府による輸出規制の結果だという。
新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)が起こる前、クックCEOは定期的に北京を訪れ、習近平(シー・ジンピン)国家主席やハイテク幹部らと会合を持った。米グーグルや米メタ、米ネットフリックスといった他の西側企業が中国から締め出される状況が続く中、アップルはそれをうまく回避しているという。
中国とアップルはウィンウィンの関係だとフィナンシャル・タイムズは指摘している。アップルと契約する電子機器受託製造サービス(EMS)企業の賃金水準は高く、同国中間層の賃金上昇に寄与している。その一方でアップルは費用対効果の高い労働力と工場に自由にアクセスでき、その恩恵を受けている。
「事業を展開する国の法律を尊重する」というアップルの中国戦略も効果を生んでいるという。同社は中国に多額の投資を約束する一方で、デリケートな問題については沈黙を守り、政府側の立場にとどまろうと努めているという。