独自の審美眼を貫く、世界のレジェンドたち。政治家から作家、思想家、建築家、ビジネスエリートまで、彼らが身に着ける品々から、その生き様も見えてくる。いかに洋服を楽しみ、相手への印象を考えて装っているのか、ドレスファッションに精通するスタイリスト四方章敬氏が解説。2人目はカナダの第29代首相ジャスティン・トルドー氏にフォーカス。隙のない正統なスタイルに、ある“ハズシ”が親しみを感じさせる。

写真=アフロ 協力=四方章敬 編集・文/名知正登

ネイビーブルーのスーチングで初対面の印象アップ

写真=AP/アフロ

 首相に就任後、初めてアメリカを訪れ、ワシントンにある議会議事堂内を歩いている場面。

「ネイビーの無地のスリーピーススーツ、ブルーシャツ、ブルーのタイで貫禄があるコーディネートです。色調を揃えているのでまとまりも生まれています。このスーツに、このネクタイの色味は面白いですね。初対面の上院の議員に会う場面ですから、溌剌で親しみのあるヴィヴィッドなブルーのネクタイを選んで印象を良くしているように思います。中に着たベストの一番下のボタンはマナーとして外しておいてもよかったかもしれませんね」。

 

シューレースの色にまでこだわるセンスに脱帽

写真=Splash/アフロ

 スコットランドの首都エディンバラでエリザベス女王に対面し、公邸のホリールード宮殿を後にする。

「この色味のスーツを簡単に着こなせるのはすごいですね。グレーネイビーという難しい色味のスーツを、ブルー系のVゾーンでうまくまとめていて好印象。スーツの色とネクタイの柄の色を拾っていて全体的にまとまりが生まれています。また、スーツに合わせて、明るい茶色の靴を選んでいるのもグッド。シューレースの色がブルーで、スーツの色にリンクさせているのはかなり計算されたテクニックですね。こんな細かいところまで目が行き届いているのは本当に洋服好きなのだなと感じました」。

 

赤のタイで惹きつけ、快活なイメージを演出

写真:AP/アフロ

 今年の6月にドイツで開催されたG7サミットの記者会見で質問に答えるトルドー氏。

「ベージュのスーツに赤のタイ、落ち着きと快活さがいいバランスで成立した素晴らしいコーディネート。こういった大勢の人の前に立つ時には赤のタイがポイントになり、注目を集めるには良いと思います。赤のタイは遠目で見ると無地に見えますが、細かい赤と白の柄でそこまで赤が主張せず、ベージュと馴染んでいますね。ベージュという難しい色目のスーツでも白シャツを合わせてタイにポイントを持ってきてサラッと着こなしているのは流石!」

 

安定感ある “ジャケデニ”ルックをアップデート

写真=Splash/アフロ

 英国王室のハリー王子とのホッケーのエキシビションマッチには、カジュアルなジャケット×ジーンズで登場。

「チェックのグレージャケットにブルーシャツ、色落ちしたデニムで全体を淡色でまとめたスタイルはキャラに合っていて◎。靴がベージュスエードなのも調和しています。ここもやはりシューレースがポイントで、紐をオレンジにしてアクセントとして奏功。こういったちょっとしたこだわりに親近感が湧きますね。ベルトだけ少し残念。バックルが大きすぎて主張が強い気がします。靴の色味に合わせてもう少し細身のベージュスエードベルトであればもっと良かったと思います」。


 若々しさと好感度の高いルックスで「イケメン」「イクメン」としても名を馳せるトルドー氏。LGBTQへの積極的な支持を示しダイバシティーの時代と共に歩む姿勢や、バランスのとれたリベラルな政策を次々に実行する政治的手腕で評価が高まっている。洋服のセンスにも定評があり、ファッションアイコンとして絶大な人気を誇っている妻ソフィー・トルドーの指南があるのかも。シューレースのカラーには今後も注目していきたい。

 

四方章敬(しかたあきひろ)
1982年京都府生まれ。スタイリスト武内雅英氏に師事し、2010年に独立。ドレスファッションに精通し、「LEON」「MEN’S EX」「MEN’S CLUB」など、多くのメンズファッション誌からオファーを受ける敏腕スタイリスト。業界きってのスーツ好きとしても知られ、イタリア・ナポリまでビスポークに赴いた経験もある。最近はセレクトショップやブランドと共同でウェアのプロデュースを手掛けるなど、活躍の幅を広げている。