2017年は、茨城県にとって「DX元年」とも呼べる大きな出来事が起こった。マイクロソフトアジアやシスコシステムズ、ドワンゴといったIT企業で敏腕を振るった大井川和彦氏の県知事就任によって、デジタル化に大きくかじを取ったことである。茨城県が掲げる「活力があり、県民が日本一幸せな県」を実現するためには、DXが必須であると考えた大井川氏。強いリーダーシップを発揮して、2期目の現在に至るまでさまざまな取り組みを具体的な成果へとつなげている。デジタルの力で生まれ変わっていく「新しい茨城」について、大井川氏が語る。
※本コンテンツは、2022年7月20日(水)に開催されたJBpress/JDIR主催「第4回 公共DXフォーラム」の特別講演3「茨城県庁のDX実現に向けた挑戦〜その取組とポイント〜」の内容を採録したものです。
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過去の経験の延長線上に未来はない。「新しい茨城」への挑戦
大井川氏が県知事に就任して最初に感じたのは、特に行政において、これまでのやり方では通用しないということだった。地方における人口減少問題をはじめ、気候変動や企業の進出・撤退など、さまざまな外部要因が大きな変化をみせる昨今。そんな中、「過去の経験の延長線上に未来はない」と感じ、変化を強く意識した行政運営を心がけてきたという。
現在、茨城県は「活力があり、県民が日本一幸せな県」をキャッチフレーズに、さまざまなチャレンジを行っている。実行に当たっては、真っ先に県庁職員に働き方の意識変革を促す必要があった。
「過去の経験の延長線上で働くことを最も得意としている行政機関が、それを真っ向から否定して新しいことに取り組んでいくわけです。そこで大事になるのは、失敗を恐れず果敢に挑戦する意識を持つこと。そして、失敗することを前提にスピードを上げてPDCAを回していくこと。さらには、しっかりと優先順位をつくり、本当に大事なところにエネルギーを集中させてメリハリのある行政運営をしていくこと。過去との継続性や他地域と横並びでなければならないという固定概念を捨て、茨城県独自の行政を本気で考えていくことでした」
新しい取り組みを進めていく上で、IT企業であれば当たり前に思える環境でさえ、行政では実現されていないことに気づかされたという。
「最大のネックは、職員の働き方だと認識しました。職員の働き方がフレキシブルでないと、新しいことへ挑戦する余力が生まれてこないわけです。ここに重点を置いて取り組みを進めてきました」
茨城県のDX実現に向けた取り組みには、下図の通り大きく4つの柱がある。