リミナルなフィンランド式空間
ラウラさんが語るフィンランドスタイルの思想に感銘を受けた私は、その後、ラウラさんおすすめの京都のマヤホテルにも取材に行ってみた。
なんとカプセルホテルであった。二段式個室と一段の個室、二種類があるが、いずれもヒュッテ(山小屋)のようなデザインになっている。空間を極力生かしたミニマルでシンプルな造りになっているが、照明もあたたかく、デザインに統一性があるので、決して貧乏くさくはなく合理的。
ごみの分別のためにヒュッテ型の3つのごみ箱には小さく日本語は書かれていたが、たしかにその他のものには文字がない。近未来的で懐かしい感覚を「リミナル」と表現するそうだが、まさにそんな感覚を味わった。
共用スペースにある食器もイッタラはじめ質のいいもので、明るい色の木材で作られた空間にはマリメッコのテキスタイルがアクセントとして使われている。1階はフィンランド式カフェになっており、各テーブルには、小さな生花が飾られる。トイレの「ジェンダー標識」のひとつは、「男性、女性、そのどちらでもある人」の3人のマークが並んだデザインになっていた。
豪華さや優雅さはないけれど、その空間にいる自分がみじめになることもない。作り手の人間らしい哲学が行き届いていることを実感できる。「ああ、これで十分、ほどほどでリラックスでき、みんなそれぞれに幸せ」というフィンランドスタイルの感覚のいくばくかを理解できた気がした。