文=福留亮司

春になると、毎年、時計の新作が発表される。今年も、スイス・ジュネーブでウォッチ&ワンダーズという発表会が開催されるが、まだ収まり切れないコロナのこともあって、日本からの参加者は少数だ。なので、昨年同様、日本での発表やオンラインで新作が発表されている。JBpress autographでも、できる限り今年の新作を紹介していきたいと思う。まずは、ブライトリング。今年は70周年を迎えたフラッグシップ「ナビタイマー」がリニューアル。新しい顔を見せている。新作モデルは、すでに29日からオンラインブティックでの注文を受け付け、ブティックでも約40の正規販売店で販売している。

『ナビタイマー B01 クロノグラフ 46』 このサイズのモデルは、レッドゴールドケースを含め4種類用意された。自動巻き(Cal.01)、ステンレススティールケース、46㎜径、109万4500円

パイロットウォッチの草分け

 ブライトリングのフラッグシップであり、パイロットウォッチの草分け的存在ともいえる「ナビタイマー」が、今年70周年を迎え、リニューアルされた。

「ナビゲーション」と「タイマー」を合わせ、「ナビタイマー」と命名された腕時計は、パイロットが必要とする、さまざまな航法計算を行うことができる“回転計算尺”付きのクロノグラフモデル。世界最大のパイロットクラブである、アメリカのAOPA(国際オーナーパイロット協会)の公式タイムピースでもあった。

 ファーストモデルのデザインは、文字盤とインダイヤルが同色のオールブラック。ベゼルは刻みがビーズ状の特徴的なものであった。そこには、ブランド名「BREITLING」のネームは見当たらず、AOPAのマークのみが置かれていた。

12時位置にAOPAのマークが入った『ナビタイマー』ファーストモデル。Breitlingのロゴがなく、文字盤はブラック一色である

 60年代になると、文字盤はブラックとホワイトのツートーン、ほぼ現行品と同様でよく知られた、いわゆる逆“パンダ”文字盤になり、より高い視認性を持つようになっている。その文字盤にはAOPAのウィングと、代わって「BREITLING」の文字が入っている。

 以降「ナビタイマー」は、航空業界の発展と共に成長しており、実際に航空機のパイロットたちにも愛されるモデルとなっていく。62年には、マーキュリー計画のメンバーのひとりで、宇宙飛行士スコット・カーペンターの腕に装着され、宇宙にも帯同している。

スコット・カーペンターは、62年に打ち上げられたマーキュリー・アトラス7号で、地球を周回している。この時、着けられていたのが彼の要望で『ナビタイマー』を24時間表示に変更した「コスモノート」だった

 また、印象的なデザインは、とくに計器を使用するわけではない一般の人々にも支持され、人気モデルとなっていった。その中には、トランペッターのマイルス・デイヴィス、仏俳優のセルジュ・ゲンズブール、F1レーサーのジム・クラークなど、多くのセレブリティも含まれている。