JBpress autographの編集陣がそれぞれの得意分野でお薦めを紹介するという、リレー形式の連載「RECOMMENDED」。ウエア、時計、バッグ、カメラなどなど、多岐にわたって、ホントにいいと思えるものを新旧問わず紹介していく予定ですので、ご期待ください。

文=福留亮司 (初出:2020年8月11日)

若々しい感性のデザインは、オンオフを問わずデイリーウォッチとして愉しめそうである

腕時計の名作中の名作

 第1回目は腕時計。パテック フィリップの「カラトラバ」である。腕時計の名作中の名作なので、ここで紹介しなくても知っている、と言われるかもしれないが、あえて紹介したい。

 それは、突然飛び込んできた朗報だった。2020年は折からのコロナ渦によって時計の新作発表の場が奪われ、各ブランドはどのような発表をするのだろうか? と、編集者やジャーナリストの間でもさまざまな意見が飛び交っていた。そのなかで、パテック フィリップは今年、新作を発表しないのではないか、ということも真しやかに話されていた。

 そんななか、6月に入ってパテック フィリップから新作が発表されるとの報があった。そして、ウエブサイトにアップされた新作が「カラトラバ 6007A」だったのである。

 まず印象的だったのが、ブルーグレーのダイヤル。中央にはカーボン風市松模様のテクスチュア、その周りには三角マーカーのついたシュマン・ド・フェール(レール)型のアワーサークルなど、時、分、秒針と3時位置の日付表示だけというシンプルな構成のなかに、グラフィカルな要素が多分に盛り込まれている。

 また、針とインデックスに蓄光塗料を使用しているのも珍しいし、ストラップもテキスタイル調に仕上げたカーフスキンを使用している。

 そして、何よりも驚いたのが「カラトラバ」では、めったなことでは現れない“ステンレススティール製”のケースだったことだ。「カラトラバ」においては、過去にないわけではないが、ゴールドケースが基本。多くのオーナーが所有されているモデルは、ほぼ間違いなく18金のゴールドケースである。

薄く、流れるようなフォルムが魅力のステンレススティール製ケース。美しく、とてもエレガントだ

 しかも、現社屋の敷地に新設された工場を記念してのもので、1000本限定という稀少性も加わっている。まさに愛好家垂涎の1本。数年後にはオークション市場を賑わすことになるだろう。