四大陸選手権で銀メダルを獲得
今年1月の四大陸選手権では日本勢としては初めての銀メダルを獲得し、表彰台に上がった。北京五輪に出場する海外の選手は不在であっても、アイスダンスの強豪国で代表に選ばれていない有力選手たちがいる中でのことだ。それはたしかな足あととなった。
それでも手放しで喜ぶことはなかった。
「昨シーズンから考えると、表彰台は想像もつかなかったですけど、銀メダリストになったうれしさの反面、悔しさもあります。そんな自分にびっくりしています」
髙橋は表彰台に上がってなお、喜びだけに浸れない自分に気づいた。そしてこう語った。
「ゴールドメダル、表彰台の真ん中に立つということを2人でやってみたい気持ちだったり、いろいろなプログラムをやってみたい気持ちも芽生えてきています。その先にもいろいろな景色が見られるんじゃないかという欲も少し出てきています。どうなるか分からないけど、この先も楽しみかなって思っています」
村元も語る。
「自分が思っている以上にもっと上で戦いたいんだと実感しました」
具体的に先のことを決めているわけではない。それでも、広がる未来を思い描く。アイスダンスの魅力に引き込まれたこともある。それ以上に、もっといける、もっと進みたいという思いを抱くからにほかならない。2シーズンで得た手ごたえがその土台にある。
昨年末の全日本選手権後の髙橋の言葉を思い起こす。
「昨シーズンはほんとうにしんどくて、毎日、どこか痛くて。でも今シーズンは27歳の頃より身体的に若くなっているんじゃないかなっていう体感があります。ちょっと気を抜くとあちこち痛くなるけれど(笑)。35っていう年齢を感じない自分もいます。練習からパフォーマンスも上がって、できるときは、こんなにできたんだと驚くこともあります。トレーニングの仕方でもっともっと変わるんだろうな、と」
自分自身が変化していけること、成長していることが楽しい、と言うようだった。それこそ、原動力かもしれない。
2人が出場する世界選手権が近づいている。
遠いところから逆算するのではなく、新たな自分に出会いたい、そんな希望とともに迎える今大会は、アイスダンサーとして初めて臨む世界選手権である。
そこで過ごす時間もまた、次へとつながっていく。