4階建の古いビルを一棟借りして

1Fにカフェ、2、3Fに『EDISTORIAL STORE』、4Fにオフィスが入る予定

 店舗となる長野県上田市の物件は、JR上田駅から徒歩7分、旧市街地から一本入った路地にある4階建のビル。もともとはこの地域の名産である胡桃を用いたお菓子を製造・販売していたところで、ファサード部分の「KUDOU WALNUT」のサインが当時を偲ばせる。築40年のこのビルを、小沢さんは一棟借りして店舗にするという。

「ひとフロアが60数平米で、1階には僕の奥さんが恵比寿でやっているラッピングとギフト雑貨のお店『Bon Cadeaux(ボン カドゥ)』が移転してきます。それから、うちの奥さんは焼き菓子をずっと作っているのでそうした焼き菓子とコーヒーを提供するカフェ・スペース『EASY BAKE(イージーベイク)』も設けます。『EDISTORIAL STORE』は2階と3階で、4階はオフィスとストックです。2階にはベーシックなアイテムとカジュアルウエア、アウトドア、ストリート・テイストのものを置く予定。もともと2階以上は住居として使われていたスペースなのでフロアの真ん中に階段があってそれがフロアを分けているのですが、2階はワンフロアをさっき述べたアイテムでまとめます。3階はモード寄りでよりコアなものを置くエリアと、『Private Room』と銘打ったスペース。『Private Room』は普段は鍵がかかっていて入れず小さなのぞき窓から中の様子を窺える、というようなイメージで、ここでは私物を販売したり、ポップアップ・ストアをやったりと、より限定感のある使い方を考えています。両フロアの什器は、セレクトショップなどの倉庫に眠っている、今は使われていないものから選ぶ予定です。このコロナ禍でクローズしてしまったお店も少なくないですが、そこで使っていた什器を活用しようということですね」

 なるほど、置かれるアイテムだけでなく什器も「ライブストック」ということで、一貫したフィロソフィーを感じさせる店舗イメージである。

1Fカフェスペース用の焼き菓子の試作品

メンズのスタイリストであることと店舗

 「EDISTORIAL STORE」で扱うアイテムは基本的にメンズのみ。

「これまで仕事でウィメンズも手がけたことがありますが、自分はメンズのスタイリスト。メンズを100とすればウィメンズは60点くらいで、やはり自信を持って取り組めるのはメンズなんです。そんなこともあり、『EDISTORIAL STORE』はメンズのセレクト・ショップ。これは勝手な理想ですが、この店が軌道に乗ったら、次は自分が信頼をおいているウィメンズのスタイリストの人にバトンを渡してウィメンズのお店をやってもらえたらと思っています。その人がたとえば北海道が地元なら北海道でやってもらう。そういうかたちで広げていけたらいいなと。ゆくゆくはインテリアや食など、業態が違う分野でも信頼できる人と組んで、緩やかな連帯感を作っていけたらと考えています」

『EDISTORIAL STORE』の構想を語る、小沢宏氏

 理念を共有する人たちとのリレーションシップを育みながら広がってゆくという小沢さんのビジョンは、これからの時代に実にしっくりくるものではないだろうか。ちなみに店名にこだわりはなく、必ずしも「EDISTORIAL STORE」の名で展開しなくてもいい、ということで、このあたりもいわゆるチェーン店、グローバリゼーションとは違ったアプローチが垣間見える。

「あくまでも理想でうまくいくかどうかはわかりませんが、こんな風にして広がっていったら最高ですよね」

 

今はもっともっと忙しくしたい

 いうまでもなく、さまざまな交渉ごとを筆頭に、オープンに向けた準備は小沢さん一人で進められている。よほど忙しいのではないだろうか。

「30代の頃は週に4本くらい撮影があって、睡眠時間は毎日3時間ほど。朝、ロケバスが迎えに来て、撮影して、終わったら事務所に戻ってコーディネート組んで、次の日はリースに回って、というその頃の状態が自分にとっては忙しさの基準になっているので、それと比べたら今は夕飯は普通に家で食べているし、そこまでの大変さは感じていないですね。なので、今はもっともっと忙しくしたい、というスイッチが入ってきて、それも楽しいと思っているところです。もっともお堅い手続きなんかは全然ダメで、その大変さはあります(笑)」

 

撮影協力:STILLPARK(玉川田園調布)