JBpress autographの編集陣がそれぞれの得意分野でお薦めを紹介する連載「RECOMMENDED」。第15回はジョルジオ アルマーニのTシャツを紹介します。
文=大住憲生 写真=山下亮一(初出:2021年6月21日)
アルマーニのコンセプトを象徴するアイテム
ジョルジオ・アルマーニさんはネイビーブルーのTシャツがよく似合う。大胸筋と上腕二頭筋と上腕三頭筋、そして僧帽筋はローマ彫刻のように程のよい曲線を描き、健康的だから。とても1934年生まれとは思えぬほど若々しい。ただいまはモードの帝王ですが、ミラノ大学医学部に入学し、医師の道を志していただけあって健康美を体現しています。
ネイビーブルーのTシャツは、ジョルジオ アルマーニの根底にあるコンセプト、タイムレスエレガンスを象徴するシンプルなアイテム。アルマーニさん曰く──。
「ネイビーブルーのTシャツは私のシンボルであり、シンプルでクリーンな要素をもつタイムレスなアイテムです。ダークスーツを着るなどの特別なオケージョン以外は、ショーの最後にランウェイに登場する場合など、ほかのものを着ることは考えられません。私にとって毎日の仕事着は、いわばユニフォームです。写真のためやカメラを意識して、おしゃれをすることもありません。いちばん相応しくて着心地がよいものを選んでいるだけです。そして、私にとってネイビーブルーという色は、いちばんエレガントで、控えめながら洗練された色。じっさい私のスタイルと性格にぴったりなのです」
ネイビーブルーは“労働意欲”をあらわす色
1950年代、Tシャツは、ハリウッド映画の若手俳優によりアンダーウェアからファッションアイテムに昇格します。1960年代になると思想や音楽、ライフスタイルがファッションに影響を与え、若者たちは異議申し立てとばかりに社会へ訴えるメッセージ、イラストレーションをTシャツに。かくしてTシャツは社会性を獲得するわけです。が、アルマーニさんはネイビーブルーのTシャツにもメッセージ性があるのだと、われわれに示しています。
アルマーニさんは、「ネイビーブルーを着ることは着る人の実物より、よりよく見せてくれます。かつ自分と他者とのあいだに的確な距離感が生まれる控えめな色でもある」と。そしてまた、この色は「安心感を与えてくれ、アイデアの源泉であり、なにより労働意欲をあらわしているのです」とまでおっしゃる。モードの帝王による色彩心理学者ばりの論考には頷くしかありません。ジョルジオ アルマーニのネイビーブルーTシャツをすすめます。