文=渡辺慎太郎
米国市場向け量産型の新型「Z」
2020年9月16日にプロトタイプを発表してからほぼ1年後の8月18日、日産自動車は米国市場向け量産型の新型「Z」をお披露目しました。「Z」あるいは「フェアレディ」の名で親しまれてきたこのクルマ、初代は1960年にデビューしたフェアレディ1200(SPL212型)で、4人乗りのオープンカーでした。「フェアレディ」の由来はもちろんミュージカルの「マイフェアレディ」。「貴婦人のような美しさを持ち、ロングランで愛されたい」との想いが込められていたそうです。2代目は同じくオープンボディのダットサン・フェアレディで1962年に登場、国産車初となる200km/h越えの最高速を記録しました。そして初めて「Z」の名が冠されたモデルが1969年誕生のフェアレディZです。昔の「Z」や「フェアレディ」と聞いて多くの人が想起するのがロングノーズのこのモデルでしょう。S30、あるいは240Zなどと呼ばれたフェアレディZは2ドアクーペとなり、これがZの初代と数えられています。
7代目のZとなる新型のエクステリアデザインは歴代のZのフォルムを踏襲しつつ、それが現代の解釈で見事に具現されています。ロングノーズや低重心のリヤのスタンスなどは初代のS30から、LEDヘッドライトは240Zをイメージしたふたつの半円で縁取りされ、テールランプは4代目のZ32をモチーフとしています。デザインは社内公募により決定したそうですが、414点ものスケッチが集まり、これは通常の5倍以上の数だとか。日産のデザイナーにとっても、Zは憧れの1台なのかもしれません。
搭載されるエンジンは3リッターのV6ツインターボで、最高出力405ps、最大トルク475Nmを発生します。従来型は3.7リッターだったので排気量は小さくなりましたが、出力で69ps、トルクで110Nmそれぞれ上乗せされています。これに組み合わされるトランスミッションは新開発の9速ATと6速MTで、どちらにもローンチコントロールが装備されました。
インテリアは、メーターパネルやセンターコンソールに液晶パネルを採用した最近のクルマに共通する景色となっているいっぽうで、インストルメントパネル上部には3連のアナログメーターを置くことで、クラシックモダンな雰囲気も漂っています。