MUJIが生まれる「思考」と「言葉」

無印良品の思想と戦略、これからの活動~幸せな経済に向かって~

JBpress/2019.12.24

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本コンテンツは、2019年12月2日に開催されたJBpress主催「ビジネス・アクセラレーション・フォーラム 2019 組織の生産性を高め、ビジネスの成長を加速せよ!」での講演内容を採録したものです。

株式会社良品計画
代表取締役会長
金井 政明 氏

「幸せ」につながる「生活価値」を提供するのがMUJI

 私どもはほとんど何も持っていない会社で、あるのは人と思想だけです。結果として売り上げが伸びて、今や「“無印”はブランドになった」などと言っていただきますが、われわれとしては「育っちゃったね」というのが本音です。そもそも「大企業なんかに決してならないぞ」と言いながらスタートして(笑)、売り上げとは違うものを目的にして始まった会社なんです。

 では何を目指す会社なのか。今日はそれについて駆け足でお話をしたいと思います。副題に「幸せな経済に向かって」という文言を用いてもいますが、まずは会場の皆さんにお聞きしましょう。皆さん、幸せですか? 参考までに国連のSDSN(持続可能な開発ソリューションネットワーク)が毎年発表している「世界幸福度ランキング」の2019年版をお見せしますと、なんと日本は58位です。

 経済の方はどうなのかといえば、「失われた25年」と言われる1990年代以降の期間、日本のGDPはほぼ横ばい。「日本人は勤勉だ」などと言われてきましたが、米国ギャラップ社が2017年に発表した「従業員の仕事への熱意度」という調査結果を見ると、日本の従業員の熱意度はたったの6%でした。ちなみに米国の結果は32%。しかも日本は調査対象となった139カ国中132位という低水準だったのです。残念ですがこれが現実。とうてい「幸せだ」とは言えませんね。

「幸せ」とは、いったいどういうものなのでしょう。水前寺清子さんは「幸せは歩いてこない」と歌っていましたし、明石家さんまさんもCMで「幸せってなんだっけ、なんだっけ」と言っていました。

 どうやら、そうそう簡単に手に入らないし、実体もつかみにくいもののようですが、私たちは「全ての人たち」が同じように持ち、欲するものにこそ幸せがあるのではないか、という気持ちで事業をしています。ジーンズがそうであり、iPhoneがそうであるように、お金持ちの社長も、ビジネスパーソンの皆さんも、学生も、等しく愛用してくれるようなモノをデザインし、提供していく。さまざまな相対論や格差を越えて、すべての人々のためのデザインを目指そう、という思いで日々仕事をしているんです。

 そもそも無印良品は1980年に西友のプライベートブランドとしてスタートしました。立ち上げたのはセゾングループを率いた経済人の堤清二と、日本のグラフィックデザイン界を代表するデザイナーである田中一光さん。この二人を発信源にパルコやロフトという、後に「セゾン文化」と呼ばれるようになったビジネスも生まれていったわけですが、同じく両氏が「消費社会へのアンチテーゼ」で共鳴し合い、最良の生活者を探求しようとする中で誕生したのが無印良品だったのです。

 多様な領域で活躍する著名なデザイナーやクリエイターも加わり、「無印」という立場に「良品」という価値観をつけていく思想についての議論がなされました。そうして到達したのが「良い商品」「良い環境」「良い情報」という3つの概念の集合体。この3つを同時にデザインすることで独自の市場を開拓していこう、というビジョンが決まったのです。加えて、「デザインによって付加価値をつけていくのではなく、生活価値の創造自体を担い、経営を含めた企業活動総体として機能する」というMUJIの思想も固まりました。