文=今尾直樹
一般の乗用車でも徐々に普及しており、薄々ではあるが電動化の波がすぐそこまできていることは感じている人は少なくない。しかし、スポーツカーの分野がどれだけ進化しているのかは、あまり知られていない。スポーツカーの雄ポルシェのそれは、どんな性能を持ち得ているのだろうか。
リスト掲載にも破格の支払いが
自動車の電動化が加速している。しかも、高性能化を伴って。その代表例が、さる9月4日に正式発表されたポルシェ初のフル電動スポーツカー「タイカン」だ。すでに受注は始まっていて、本年3月に同社が発表したところによれば、ヨーロッパだけで2万人の申し込みがあるという。リストに載せてもらうのに2500ユーロの支払いが求められるというのに。
そのタイカン、性能はまさしくポルシェの名にふさわしい。いまのところ、「ターボ」と「ターボS」、ふたつの設定があり、トップエンドのターボSの場合、ローンチコントロールを使った際に最大761psのオーバーブースト出力と1050Nmという途方もない大トルクを発生し、静止から100km/hまで、アッ、アッ、アッという間の2.8秒で到達する。車重2.3トンの重量ボディがかくも速いのは、いきなり最大トルクを生み出す電気モーターならではで、しかもタイカンはその電気モーターを前後アクスルに1基ずつ装備する4WDだからである。
この速さは内燃機関だとちょっと太刀打ちできない。サイズ的に近いパナメーラの最高性能モデル(ハイブリッド)が0-100km/h加速3.4秒、911ターボSが同2.9秒と発表されている。いやはや、恐るべきエレクトリック4ドア・サルーンである。
ニュルブルクリンク北コースのタイムは7分42秒。もちろん4ドアとしては尋常ならざる速さではあるけれど、2009年に日産GT-R(R35)が記録したタイムが7分26秒である。10年も前だ。そう考えると、意外と遅い。それは最高速度が260km/hにとどめられているからだ。で、なぜ260km/hに自己規制しているのかといえば、航続距離を確保するためであるに違いない。