本コンテンツは、2019年5月27日に開催されたTECH PLAY主催「先人が語る、明日から使えるデジタルトランスフォーメーションの進め方! デジタルによる変革を推進するためのシナリオとステップとは?」でのパネルディスカッションの内容を採録したものです。

DXとはそもそも何なのか?

「明日から使えるデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」という、思わず目をひくテーマを掲げて行われたイベントには、定員150名の会場に200名を超える参加者が集合。メインセッションであるパネルディスカッションにも、ミツカンホールディングスCDOの渡邉英右氏、Kaizen Platform CEOの須藤憲司氏、パーソルホールディングスCDOの友澤大輔氏という、“変革”実績で知られるつわものがそろった。冒頭、モデレーター役の友澤氏は「そもそもDXって何なのか」という点について持論を披露する。

友澤:デジタルを使って何かしましょう、というアプローチの全てがDXなのかというと、私は違うと思っています。これは私がパーソル経営陣にプレゼンした時にも伝えた捉え方なんですが、多くの場合2つに分かれます。1つは「デジタル化」というアプローチで、従来から手掛けてきた業務プロセス改革において、デジタル技術を活用していこうというもの。今までアナログな処理に頼っていた幾つかのプロセスにデジタルを取り込むことで、「既存の業務プロセスを変えないまま、リードタイムを短縮できるようにしていく」営みです。そしてもう1つが「DX」。今までにないプロセスを生み出し、新しいユーザー体験を創出することで、既存事業では得られなかった価値を提供していく営みです。そしてこのデジタル化とDXとを切り分けて捉えるとことから始めましょう、というのが私の持論なんです。

友澤大輔氏
パーソルホールディングス株式会社 Chief Digital Officer 兼 グループデジタル変革推進本部 本部長

 前職のヤフーで、マーケケティングとコミュニケーションの双方を担当するCOO直轄のマーケティングセントラライズ組織であるマーケティング&コミュニケーション本部を新設し、同社の変革に携わった後、パーソルホールディングスでCDOに就任した友澤氏。多くのDX関係者が常にモヤモヤしながら抱えている「何をもってしてDXと呼ぶのか」という点について、以上のように明快な見解を示した。この後、友澤氏は「デジタル化とDXの決定的相違点」として以下の4つを掲げた。

①既存事業の成長のために必要なのが「デジタル化」
②既存事業を変革するのが「DX」
③「DX」によって生まれた新規事業をスケールする「デジタル化」
④その新規事業を成長させていくためには「デジタル化」と「DX」の双方が必要

 すると、この友澤氏による分類にミツカンホールディングスの渡邉氏も同意を示し、自社の現状について語り始めた。マイクロソフトやカタリナマーケティングといった先進的企業を経た後、日本マクドナルドのデジタル変革を担ってきた実績を持つ渡邉氏が、あえて伝統企業であるミツカンホールディングスに入社した理由とも重なるのだという。

渡邉:ミツカンのブランドは江戸時代から続いていますし、おそらく多くの方は古い会社という捉え方をしていると思うのですが、実は積極的にチャレンジをしてきた結果、長い歴史をつくり出すことに成功した企業なんです。事実、今では売り上げの半分をグローバルで得ています。私自身、そうした事実を知ったことから、ミツカンホールディングスのDXに携わりたいと感じ入社したわけです。実際に入ってからまだ半年なのですが、何より感心したのは、すごく地道な部分をしっかり固めた上でチャレンジをしている、ということ。いま経営サイドが進めている「三位一体活動」というのも「現地・現物・現実」の「三現」をプロセスフローで「見える化」していこうというもの。これは変革を起こすためには絶対に必要な取り組みだと思うんです。ですから、友澤さんが「DX」と「デジタル化」に分類をしつつ、「どっちも企業にとっては重要ですよ」とおっしゃったことにも共感しました。「DX」というと、大胆でカッコイイことのように捉えがちですけれど、デジタル化の範疇に入る地道なプロセス改革も企業には不可欠ですし、その2つをどう連動させられるかが担い手には委ねられているんだと思うんです。

渡邉英右氏
株式会社 Mizkan Holdings 執行役員 Chief Digital Officer デジタル戦略本部 本部長 兼 プロセストランスフォーメーション部 部長

 一方、Kaizen Platformとして数々の企業からのオファーを受け、動画、クラウド活用などを軸にDXを推進している須藤氏は独自の視点で「DXの定義づけ」を語った。