「天網」の街頭監視カメラがついた信号機。(筆者撮影、以下同)
顔認識システム(Face Recognition System)とは何か。
それは、監視カメラのデジタル映像から個人を自動的に識別するためのソフトウエア技術であると同時に、IoTを支えるAI基幹技術のひとつでもある。
撮影されたデジタル動画から人間の「顔」に相当する部分を切り出し、あらかじめ蓄積されている顔画像データベースと照合することで瞬時に個人を割り出す。
『IoT Today』の読者の方々ならご明察の通り、顔認識システムはセキュリティ強化や犯罪捜査には強力な武器となる。
興味深い活用方法として、日本でも、人気ミュージシャンのコンサートチケットの高額転売を防止する目的で、NECの顔認証システム「NeoFace」を導入し、チケット購入者本人が本当に来場しているかどうかのチェックを行っている事例が知られている。
「顔」という重要な個人情報が、空港や街頭の監視カメラ、警察官のサングラス型のスマートグラスなどを通じ、多くの場合、個人の「許諾」を前提にしない形で、しかも「無作為」に収集されることには抵抗を感じる人も多いと思う。
この点は、他の生体認証技術(指紋、虹彩、音声など)の取得の前提条件と大きく異なるところであり、それゆえ顔認識システムの功罪の「罪」の部分について議論が百出する背景にもなっている。
しかし、だからと言ってこれをジョージ・オーウェルの小説『1984』に登場する「ビッグ・ブラザー」のように、人々を常に監視しプライバシーを侵害する「悪魔」のツールであると決めつけてしまうのは極めて早計だ。
今回は中国本土で導入が急ピッチで進む、「天網」(てんもう:中国語の発音は、ティエンワン)に着目し、スマートシティを支える都市インフラとしての可能性にまで視野を広げて考えてみたい。