TOPPANホールディングス 執行役員 デジタルイノベーション本部長の伊藤隆司氏(撮影:冨田望)

「1万人の社員に1万通りのシステムがある」──基幹システム群の乱立と老朽化、ブラックボックス化という課題を抱えていたTOPPANグループ。無数のレガシーシステムはデータのサイロ化を招き、成長の足かせとなっていたが、誰もがその問題に見て見ぬふりをしてきたという。同社はいかにして現場の意識を変え、グループ共通のERP(統合基幹業務システム)への統合を実現したのか。変革の舞台裏についてTOPPANホールディングス執行役員デジタルイノベーション本部長の伊藤隆司氏に話を聞いた。

創業125年の歴史で深まった「基幹の闇」

――印刷事業からデジタル領域への事業ポートフォリオの変革、ホールディングス制の導入に象徴される組織変革と、TOPPANグループは今、大きな転換期にあります。その中にあって、従来の基幹システムにはどのような課題があったのでしょうか。

伊藤隆司氏(以下、敬称略) これまで印刷事業を核に成長してきた当社では、125年の歩みにおいて、各地域のお客さまのニーズに応えながらビジネスを形成していった歴史があります。例えば、チラシの印刷一つをとっても、北海道のA社と大阪のB社では要望は異なります。個社ごとのニーズに対応する形で、業務フローを確立していきました。

 その結果、何が起こったか。業務フローを支える基幹システムが、地域の拠点ごと、事業部門ごとにバラバラになってしまったのです。極端に言えば、「1万人の社員に1万通りのシステムがある」ようなもので、個別最適化されたシステムが乱立し、データの連携が取れないサイロ化の状態となっていました。

 同じ経理部門でも、北海道と大阪では業務フローもそれに伴うシステムの仕様もデータ形式もまったく異なります。グループとして決算資料などを作成する際にはデータを統合する必要があり、経理部門の社員が深夜まで残業をして対応する、といったことが常態化していました。