
ブランド独自のゴールド素材
2019年に発表された『オデュッセウス』はA.ランゲ&ゾーネのスポーティウォッチである。スポーツやレジャーで高精度な機械式時計を身に着けたいというニーズに応えるために開発されたもので、1990年のブランド復興以降、明確にスポーティを謳ったモデルはこれが初めてであった。しかもこのモデルが発表された当初は、ステンレススティール素材のものだったのだ。それまでゴールドもしくはプラチナ素材のモデルしかラインナップになかったA.ランゲ&ゾーネだったので、当時は驚きをもって報じられた。
現在は他のコレクション同様、18Kゴールド製モデルのバリエーションが展開されており、今年はそこにどのゴールド合金よりも硬い、A.ランゲ&ゾーネ独自の18Kハニーゴールド製のケースとブレスレットを纏ったモデルが登場したのである。そして、それに合わせるように文字盤には温かみのあるブラウンを採用している。
『オデュッセウス』としては初めてとなる18Kハニーゴールド製ケースは、直径 40.5 mm、厚さ11.1mm。厚すぎず、細めのベゼルと相まって、スポーティモデルとはいえとてもエレガントである。しかも、ケースとブレスレットはサテン仕上げを基調に、稜線やベゼルはポリッシュが施されており、奥行き感のある仕上がりになっているのだ。

高い視認性とランゲらしい個性
ディテールに目を移すと、針、アプライドインデックスもハニーゴールド製。文字盤のブラウンカラーと調和しており、そこにホワイトの蓄光塗料が施されることで、さまざまなシーンでの視認性を確保している。
そして、各インデックスの間とサブダイヤルの目盛りに施されたエンボス加工の溝が、ダイヤルの立体感を際立たせ、メインおよびサブダイヤルの内側に施されたやや光沢のある表面とコントラストを成している。さらに外に向かって競り上がるように傾斜の付いた、ゴールドカラーの分目盛りがあしらわれたフランジ、そしてその60位置の赤字が、個性を際立たせているのだ。

同じ18Kハニーゴールド製のブレスレットは、しなやかな5列リンク。フォールディングバックルは落下防止機構が組み込まれており、安全に使いやすく、しかもバックルを開かずプッシュボタンを押すだけで最大 7 ミリまで長さを調整できる仕組みになっている。
堅牢かつエレガントなムーブメント
このモデルの心臓部であるムーブメントは、自動巻きの自社製キャリバーL155.1 DATOMATICで、毎時 28,800振動で動き、最大50時間のパワーリザーブを誇る。外部からの振動や衝撃にも強い、堅牢な設計が魅力だ。ちなみに「DATOMATIC」という名は、日付機構と自動巻き機構の組み合わせを意味する。

職人の手によって二度組みされたムーブメントは、ブラックロジウム加工を施したプラチナ950製の分銅付きローター、洋銀製のプレートとブリッジ、職人が手作業で青焼きしたビス、ガンギ車の上のビス留め式ゴールドシャトンなどで構成されており、その精密な動きはサファイアクリスタル製のケースバック越しに見ることができる。