
時計史において、その名が特別な輝きを放つムーブメントがある。1950年代、有力ブランドがしのぎを削った天文台クロノメーターコンクールで、5年連続首位に輝いたゼニスのキャリバー135である。マニュファクチュール設立から160年という記念すべき節目に、ゼニスはこの伝説的ムーブメントを現代に蘇らせた。「G.F.J.」の名称は、1865年にマニュファクチュールを創設したジョルジュ・ファーブル=ジャコのイニシャルに由来する。
天文台コンクールを制した精度の極み
精度試験は、単なる技術的評価を超えた名誉の象徴であった。熟練の時計職人たちが自らの腕前を披露し、その精度を証明する場として、各ブランドは入念に準備したムーブメントをもってこの試験に臨んだのだ。1897年から積極的にコンクールに参加していたゼニスは、その歴史を通じて驚異的な2333件ものクロノメトリー賞を獲得するに至る。
その頂点に立ったのが、キャリバー135だ。“135”の数字は、直径13リーニュ(約30mm)と厚さ5mmを意味する。
1949年から1962年まで製造されたキャリバー135は、市販モデル用の「135」と天文台試験専用の「135-O」の2つのバージョンで展開。特筆すべきは、クロノメーター職人として名高いシャルル・フレックとルネ・ギガックスが調整を担当した「135-O」が、ヌーシャテル天文台の腕時計部門において、1950年から1954年まで5年連続で首位を獲得したことである。この偉業は、時計製造の歴史に燦然と輝く金字塔となった。
伝説を現代に解釈する
「G.F.J.」に搭載される復刻版キャリバー135は、オリジナルの精神を継承しながらも、21世紀の技術と素材を取り入れて再設計されている。オリジナルのサイズ、外観、構造を踏襲しつつ、オフセットのセンターホイールを採用することで大型テンプを収めるスペースを確保し、精度と安定性を向上させている。

パワーリザーブは当時の40時間から72時間へと大幅に延長され、135-Oを象徴するダブルアロー形の調速機構が精密な調整を可能にした。また注目すべきは、このムーブメントが日差±2秒以内という驚異的な精度に調整され、COSC認定を取得していることだ。これは現代の高級機械式時計の水準においても卓越した値である。

一方、「G.F.J.」の外装は、技術的な卓越性に匹敵する美しさを誇る。39mmのプラチナ製ラウンドケースは、段差の付いたベゼルと曲線的なラグによって優美な佇まいを見せる。

文字盤は多層構造で、外周リングには「ブリック」ギョーシェ模様が施され、マニュファクチュールの象徴的なファサードを思わせる意匠となっている。中央部分はディープブルーのラピスラズリで作られ、この石に含まれるパイライトが星空を想起させる煌めきを放つ。さらに6時位置には、マザー・オブ・パールのサブダイアルが配置されている。
時、分、秒を示す細身のホワイトゴールド製針は、文字盤の上を優雅に進む。文字盤を縁取るホワイトゴールド製アワーマーカーのファセットカットや、ミニッツトラックとして手作業でセットされた40個のホワイトゴールド製ビーズなど、細部にまで行き届いた仕上げが実に美しい。
ゼニスCEOのブノワ・ド・クレーク氏は次のように述べている。
「時計製造の歴史において、キャリバー135に匹敵するクロノメトリーの卓越性を達成し、その名を知られたムーブメントはごくわずかです。(中略)創業160周年という節目にこのキャリバーを復活させたのは、そのレガシーを讃え、また新たな世代のコレクターに伝えていくためでもあります。『G.F.J.』では、この伝説的なムーブメントを単なる過去の再現ではなく、ヘリテージの核を伝えることを目指しながら、現代の感性に響く形へと再解釈しました(後略)」
世界160本限定の「G.F.J.」は、ゼニスブティックおよびオンラインブティック、正規代理店にて、プレオーダーのみで販売される。
