文=細谷美香

長く愛されているホラーコメディの35年後を描く

『シザーハンズ』『チャーリーとチョコレート工場』をはじめダークでユーモラスな作品の数々を生み出し、世界中のファンを魅了し続けているティム・バートン監督。『ビートルジュース』は監督ならではの世界観をギュッと閉じ込めた初期の傑作のひとつだ。

 ブロードウェイミュージカルとしても人気を博し、昨年は福田雄一・演出、SixTONESのジェシー主演で日本版公演も上演された。長く愛されているホラーコメディの35年後を描く続編が『ビートルジュース ビートルジュース』。年齢600歳(推定)のバイオエクソシスト=人間怖がらせ屋が、時を超えてスクリーンのなかで大暴れを繰り広げ、全米でヒットを記録している。

 その名を3回呼ぶと死後の世界から現れるビートルジュース。彼は愛するリディアと結婚して人間界に移住するという野望を抱き続けている。リディアは霊能力を生かしてテレビ番組で活躍しているが、思春期の娘、アストリッドとの関係はギクシャクしていた。ある日、死後の世界に囚われた娘を救い出すため、リディアはビートルジュースとコンタクトを取ることになる。

 前作から引き続き、ビートルジュースを演じるのは70代となったマイケル・キートン。常にふざけていてエキセントリックでお下劣で、何より自由奔放! ときにはグロテスクで不謹慎な存在が縦横無尽に大活躍する様が、最後までこの映画を弾ませている。ゴスっ娘のリディアを演じていたウィノナ・ライダーは、迷える母に。心霊現象など信じないリアリストの娘を、ティム・バートンが監督、製作総指揮を務めたドラマ『ウェンズデー』のジェナ・オルテガが演じ、母と娘の物語が軸になっている。

 リディアの母を演じるキャサリン・オハラが、ナルシストな芸術家として続投しているのも心浮き立つポイントだ。ビートルジュースの元妻を演じるモニカ・ベルッチは、ティム・バートン監督作品に初参加。バラバラになった自分の身体をホッチキスで繋ぎ合わせていくシーンは、これぞティム・バートン節! という奇妙な美しさにあふれている。

 前作のあの屋根裏が映し出され、『バナナ・ボート』を子どもたちが合唱して、サンドワームはバージョンアップ。ほとんどCGを使わず、ハンドメイド感を大事にしながら撮影された映像には、ノスタルジックな趣きがある。

 独創的なキャラクターとゴシック・テイスト、コミカルに繋がっているあの世とこの世、異端者へのまなざしといった、ティム・バートン監督の世界がたっぷり詰め込まれた『ビートルジュース ビートルジュース』。ハロウィンに向けて盛り上がるこの季節、恐怖と笑いが散りばめられたお化け屋敷に迷い込んでみてほしい。