欠かせない監督の存在

バレーボール男子、ネーションズリーグ、ドイツに勝利し、ブラン監督(左)とタッチを交わす石川祐希 写真=共同通信社

 チーム戦術という点では、フィリップ・ブラン監督の存在は欠かせない。現役時代、フランス代表として活躍したブランは、2002年、フランス代表の監督として世界選手権銅メダルに導き、2014年にはポーランド代表のコーチとして世界選手権優勝を同国にもたらしている。バレーのトップレベルを熟知し、そして長年にわたり指導にあたってきた人だ。

 その手腕を買われ、2017年、日本代表のコーチに就任した。正式に監督に就任したのは2021年10月だが、コーチの肩書ではあっても当時から実質的に指導にあたってきた。

 日本代表では、日本の選手の特徴を把握し世界のトップクラスとどう戦うかを考え、チームに浸透させていった。もとからのよさであるレシーブ力をベースにしつつ、平均身長で劣る日本がどこで得点を獲れるかを考え、その1つとしてサーブ力を鍛え、さらにスパイクの強化も図っていった。世界のトップレベルを知る指導者だからこそ、選手に対する説得力も生まれた。

 スパイク等の強化という点と関連するのが「選手の成長」だ。ここで言う成長とは、まずは海外を経験した選手たちが増えたことだ。

 日本のエース格と言えば、石川祐希にほかならない。身長は192cmと決して大きくはないが卓越したスパイク技術を身に着け、得点を重ねていく。

 その土台となっているのが海外経験だ。大学1年生のとき、イタリアのトップリーグであるセリエAの「モデルナ」に加入。その後も海外でプレーする機会を得ると、大学卒業後は通常のルートであるVリーグに進むことなく海外に渡り、プロバレーボール選手として今日に至るまでイタリアでプレーを続けている。世界のトッププレイヤーが集うリーグでもまれる中で、成長していった。

 進境著しい高橋藍もまた、2022年以降、イタリア・セリエAでプレーしてきたことが飛躍を促した。

 この2人だけではない。セッターの関田誠大は東京オリンピックのあと、ポーランド1部リーグの「クプルム・ルビン」に移籍し2021-2022シーズンをプレーした。同じシーズン、西田有志はイタリア・セリエAの「ヴィボ・ヴァレンツィア」でプレー。また、宮浦健人は2022-2023シーズンにポーランドの「PSGスタル・ニサ」で、2023-2024シーズンにはフランスのリーグA「パリ・バレー」でプレーしている。

 海外の大柄な選手と対峙してプレーすることに慣れ、その中でどう力を発揮すればよいのかを経験し、模索してきた選手たちがいる。攻撃のポジションの選手なら、どうスパイクを打ち抜けばよいのかも探求してきた。そんな個々の成長が、ブラン監督の求めるチームづくりの方向と合致して、日本は強くなっていった。

 その成果は東京オリンピックですでに表れていた。29年ぶりにベスト8入りを果たしたことだ。その延長上に、今日の好成績がある。

 パリでメダルを獲得すれば、オリンピックでは実に52年ぶりとなる。

 大きな目標を向けて、強化の成果を証明するために挑む。