brand1 COMME des GARÇONS HOMME

ベーシックのなかに個性を宿すメンズライン

[左]ロングスリーブTシャツ¥13,990・[右]パンツ¥19,990/コム デ ギャルソン オム(キスメット)

 前述の通り、ギャルソンブランドは今や多岐に渡っている。基軸である「コム デ ギャルソン」はレディスブランドで、1978年からスタートしたのが、ここで紹介するメンズブランドの「コム デ ギャルソン オム」だ。

 現在はかの渡辺淳弥氏がデザインを手掛けているが、昨今ヴィンテージ界でことに高い支持を集めているのが、通称「田中オム」。これは1990年から2000年代初頭まで、田中啓一氏がデザインを担当していた期間を指す俗称。川久保氏は田中氏に“グッドテイストな服を作ってほしい”という、極めてシンプルなメッセージを伝えたとされているが、この田中期の「コム デ ギャルソン オム」=「田中オム」には、そのメッセージ通り、ベーシックでファッションに取り入れやすいのに、素材やパターンなどの意匠で鮮度を取り入れた、極めて通好みな良品が集っていた。

 左のロンTはまさにその好例。対して右のパンツは、一見ミニマルなブラックパンツながら、まるでタキシードの組下にみられる側章のような切り替えをあしらった個性派。「コム デ ギャルソン オム」は、デザイナーやアイテムによって多彩な表情を見せるだけに、“掘る”楽しみも味わえる。

 

brand2 L.Q. Y’s for men

多くのフリークを生み出す隠れ名品

[左]デニムジャケット¥39,990・[右]オープンカラーシャツ¥11,990/ワイズ フォー メン エルキュー(キスメット)

 山本耀司氏が生み出した数々のブランドのなかでも、1979年に同氏が最初に手がけたメンズブランド「Y’s for men(ワイズフォーメン)」は、軸となる存在のひとつ。もともとは“Y’sを着ている女性の隣にいる男性が似合う服”というコンセプトのもと、同氏のワードローブのデザインを反映したコレクションを展開していたが、2010年春夏シーズンに休止。昨年新生「Y’s for men」として13年ぶりに復活を遂げたことは、世界のファッション界で大いに話題になった。

 写真の二着は80年代に存在していたとされる、「L.Q. Y’s for men(ワイフロング ワイズフォーメン)」という派生ブランドのもので、熱心なワイズフリークの間では高値で取り引きされる隠れ名品。ワークテイストのデニムジャケットと、大ぶりなシルエットの開襟シャツは、40年近い歳月を経た今でも、古さをまったく感じさせないのが凄いところ。“アヴァンギャルド”と“普遍”という矛盾を両立させる同氏の審美眼には、ただただ感服させられるばかり。

 

brand3 Plantation

巨匠が考える日常着の理想像

[左]ジャケット¥18,990・[右]ブルゾン¥17,990/プランテーション(キスメット)

 三宅一生氏も前述のご両人と同じく、存命中に数々のブランドを創設しているが、そのどれもが近年一部のファンの間で、ヴィンテージとして垂涎の的に。1981年にスタートしたこの「Plantation(プランテーション)」もそのひとつ。これは性別や年齢や体型を問わずに着ることのできる“日常”のための生活着を旨としたブランド。天然素材を中心としつつ、ベーシックかつコンフォートな着用感と、洗濯などのメンテナンス性にも配慮した、とっつきやすさが人気の要因だ。それでもわかる人が見れば一発でわかるイッセイテイストは健在。

 打ち合いの深い左のコットンジャケットも、シワ感やユルめのシルエットをいかし、カーディガンライクな雰囲気に。右のブルゾンもボクシーなシルエットと品行方正なライトベージュコットンの相乗効果で、大人のカバーオール的印象に仕立てられている。作家性と実用性を両立させた、服好きには極めてありがたいブランドだ。