文=酒井政人 写真提供=ナイキジャパン

左から坂井隆一郎、鈴木亜由子、鈴木芽吹

長きにわたりランナーに愛されてきたモデル

 ナイキが仕掛けた新たなイノベーションで、世界のマラソンシーンは〝厚底〟がスタンダードになった。一方で、ナイキには40年以上にわたり、世界中のランナーに愛されてきたモデルがある。

 それが1983年に登場した『ペガサス』だ。ギリシア神話に登場する伝説の生物(鳥の翼を持ち、空を飛ぶことができる馬)の名前がついたシューズは、静かに、確実に進化を遂げてきた。そして最新モデルとなる『ペガサス 41』が発売となる。2年間で1000人以上のランナーからフィードバックを得て完成した一足だ。

 フォーム素材が新しくなり、従来と比べて13%以上のエネルギーリターンを実現。ミッドソールは前作より4㎜厚くなり、反発性と安定性が向上した。前⾜部と踵部にエア ズーム ユニットを搭載した豪華なクッショニングシステムになっている。

 高いフィット感が好評だったが、アッパー部分の通気性が良くなり、快適性もアップした。また製造⼯程におけるエネルギー使⽤量も大幅に削減。ランナーだけでなく、地球にも優しいモデルだ。

『ナイキ ペガサス41』16,500円(税込)

 筆者は『ナイキ ペガサス 41』のトライアルランセッションに参加。実際に新モデルを着用して、六本木付近を走った。従来モデルよりも弾む感覚が強く、〝翼〟を感じたほど。ボルトカラーは6月5日から順次発売され、ブループリントカラーは今夏発売予定だ。

 また『ナイキ ペガサス 41』のイベントには3人のアスリートが登場。トークセッションで新モデルの魅力、今後の目標などを語った。

 

マラソン再挑戦を誓う鈴木亜由子

 東京五輪女子マラソン代表の鈴木亜由子(日本郵政グループ)はマラソン練習を始めた2018年から『ペガサス』を着用。新モデルの『ペガサス41』は「履きやすいな」という印象を持ったという。

「最初に感じたのはすごく優しいなと思いました。足入れしたときのフィット感が、初めて履いたとは思えないくらいの感じがしたんです。そして反発もしっかりありますね」

 ロードレースは『ヴェイパーフライ3』、トラックレースはスパイクの『ドラゴンフライ 2』で勝負している鈴木。普段のジョグは主に3つのモデルを使い分けている。

「一番履くのが『ペガサス』です。少し反発が欲しいときは『インヴィンシブル』。脚を休ませたいときは『ボメロ』ですね。その日の気分や目的に応じて選んでいます」

 そして『ペガサス 41』はジョグだけでなく、もう少し負荷の高いメニューでも積極的に活用しているという。

「朝練習の集団走など、キロ4分~4分半くらいで軽快に走るときにも使用することがあります。脚作りにも使えますし、いろんな場面で使える。本当に汎用性が利くシューズだと思います」

 これからランニングを始める方の〝ファーストシューズ〟としてもお勧めできるモデルのようだ。

 鈴木は昨年10月のMGCで12位に終わったが、今年3月の名古屋ウィメンズマラソンは終盤盛り返して3位(2時間21分33秒)。その走りに感動した方も多いだろう。

「名古屋はパリ五輪代表を目指して全精力を注いだレースになりました。目標は達成できなかったですけど、たくさんの方に応援していただいて、最後まで粘りきることができたと思います。5月には2年ぶりにトラックレースに出場しましたが、まずはスピードを戻したいと思っています。チームの仲間に刺激をもらいながら楽しく走れているので、また駅伝やマラソンに出られるように頑張っていきたいです」

 

ペガサスを履いて高速ペースで走る鈴木芽吹

 社会人1年目の鈴木芽吹(トヨタ自動車)は高校3年時から『ペガサス』を履いており、「いろんな場面で使えるシューズ」として愛用している。その使用頻度は〝日本一〟といえるかもしれない。

「ロードレースとスピード練習は『ヴェイパーフライ 3』。トラックレースは『ドラゴンフライ 2』を履いています。それ以外は『ペガサス』が多いですね。ジョグだけでなく距離走でも履くので、普段から2足を使いまわしています。距離走ならキロ3分30秒ぐらいのペースで20~30㎞走るメニューでも使用していますし、距離走の後、プラスして1000mや400mをやるときも『ペガサス』でやっています。とにかく、いろんなペースに対応できるシューズです」

 鈴木のペースはすこぶる速い。『ペガサス』を履いて、1000mは2分40秒、400m1本なら60秒ほどで駆け抜けるようだ。そして『ペガサス 41』の進化をこう感じている。

「最初に履いたときは、クッション性が高まった印象がありました。さらに反発も強くなっています。前作と比べると、長い距離を無理なく、脚に優しく走れる要素が強くなったかなと思います」

 鈴木は駅伝で大活躍してきた選手だ。佐久長聖高時代は1年時に全国高校駅伝で日本一を経験。駒大時代は学生三大駅伝で6つのタイトル獲得に貢献している。

 社会人となった今季は5月3日の日本選手権10000mで4位(27分26秒67)に入ったが、本人は満足していない。

「残り1000mで前3人の選手たちと勝負できなかった。悔しかったですけど、まだまだやれる感覚もつかめたんです。来年の東京世界陸上は本気で狙っていきたい。またトヨタ自動車という駅伝で日本一のチームに入ったので、連覇を続けていけるような戦力になれればいいなと思っています」

 

スプリンターがペガサスを選ぶ理由

 100mで日本歴代7位タイの10秒02を持つ坂井隆一郎選手(大阪ガス)は2年前から『ペガサス』を履いているという。当初から「安定感があった」というが、国内屈指のスプリンターは普段、どんなシューズを履いているのだろうか。

「ジョグのときは『ペガサス』、動き作りやスピードを出すときは、『ストリークフライ』を履くことが多いですね。レースはスパイクの『マックスフライ 2』です。『ペガサス』は練習時だけでなく、移動時などにも使用しています」

 スプリンターは薄底派が主流で、『ペガサス』ユーザーも多いようだ。最新の『ペガサス 41』についても坂井は好感触を持っている。

「安心感と気持ち良さが増してジョグをしていても楽しいなと感じました。履いているだけで気持ちが高まるシューズです。いろんな人に愛されるんじゃないでしょうか」

 陸上選手だけでなく、野球、サッカーなどのトレーニングシューズとしても活躍するモデルといえそうだ。

 オレゴン世界陸上の男子100mで準決勝に進出した坂井。今季は腸腰筋を痛めて出遅れたが、5月12日の木南記念を10秒20(+0.2)で制して、連覇を達成した。19日のセイコーゴールデングランプリの予選では10秒10(+1.0)をマーク。6月2日の布施スプリントは追い風参考の10秒12(+2.8)で3位に入っている。

「100mは10秒で終わります。短い時間のなかでドラマがあるのが魅力ですね。努力することは苦ではありません。9秒台を出して、オリンピックで活躍することが大きな目標です」

 6月下旬の日本選手権、それから今夏のパリ五輪を見据える坂井。『ペガサス 41』を履くアスリートたちがこれからもドラマをつくる。