“早来迎”はやはり名品!

 特別展「法然と極楽浄土」は、2024(令和6)年に浄土宗が開宗850年を迎えることを機に開催される展覧会。法然による浄土宗開宗から徳川将軍家の帰依によって大きく発展していく流れを、浄土宗ゆかりの文化財を通して探求していく。

 まずは展覧会の全体的な印象から。構成がシンプルで分かりやすく、解説が丁寧。法然の人物像、浄土宗の教え、弟子たちの活躍、浄土宗のさらなる発展を、教科書を読むようにきっちり学ぶことができる。とはいえ、教科書のように淡々としているわけではないのでご安心を。順路のところどころに国宝に指定された“大物”が現れ、気分が上がる。

特別展「法然と極楽浄土」展示風景。国宝《法然上人絵伝》(部分)鎌倉時代・14世紀 京都・知恩院蔵 ※会期中展示替えあり

 まずは国宝《法然上人絵伝》。浄土宗総本山、京都・知恩院に伝わる「浄土宗の聖典」というべき絵巻で、全48巻という圧倒的なボリュームを誇る。法然の出生から往生までの生涯を分かりやすく解説したもので、法然が京都東山の吉水草庵で念仏の教えを説く場面などが描かれている。

特別展「法然と極楽浄土」展示風景。国宝《阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)》鎌倉時代・14世紀 京都・知恩院蔵

 同じく京都・知恩院蔵の国宝《阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)》は、2019~21年度に修理が行われ、背景の山水表現などが鮮明になった状態で初公開される。来迎図とは、人が臨終を迎える際に阿弥陀様が多数の菩薩様とともに雲に乗って降りてくる様子を描いた“お迎えの図”。本作は来迎図の最高傑作といわれており、来迎の迅速感を表す画面左上から右下への一直線の構図と飛雲の表現が素晴らしい。